ドリーム小説











カウントダウン 1


























ゆっくりと目覚めた世界の中。

一番に目に入ってきたのは整った顔。

声を上げなかった私をほめてほしい……びっくりした。

思い起こすのは、昨日のこと。

日常を、ともに過ごしたいと。
そう言ってくれた優しいこの人。
嘘じゃない、夢じゃない。
じわり、胸に広がる幸福を我慢できずに・

そおっと唇を近づける。

ちゅ、と小さな音を立ててその箇所に落とした口づけ。

どうだ、とばかりに距離をとれば___

「ひぇ!」

ばっちりあいている瞳とこんにちはだ!

「どうせなら、こっちにくれ」

掠れた声と同時にぐ、と後頭部を引き押せられて。
そのまま彼の顔が目前に。

「こっち」

掠れた声で誘われたのは曰く、唇と言うところで。

「む、り!」

自分から、というか望まれてすぐできるかというと、難しいものがあるわけで!!

その分厚い胸板を押しのけるように力を入れたけれど、まったくもって効果はなく。

むう、とした表情をされた。
う、わ、かわいい・・・・・・

「なら、俺から___」

そのまま呼吸は奪われて、息をしようと開けた咥内は食い荒らされて。
息も絶え絶えの私の横、ご機嫌そうに笑った彼をかっこいいと思う私はもう解されてる、確実に。

「もう、おきる・・・・・・」

そう言ってベッドから出ようにも、彼の胸元にぎゅうと抱き寄せられれば抵抗もできず。
そのまま二度寝に身を預けたのは仕方がないと思います!







なんとか彼の腕の中から体を引っ張り出して、あくびをしながらも向かった台所。
昨日あのまま二人で眠ってしまったから、冷蔵庫の中には昨日の朝食べそこなったホットケーキがあって。
___ちなみにコーヒーはなくなっているので、赤井さんが消費したと思われる。

今日くらいは、と残っていたホットケーキミックスを出して作り出す。
生クリームに果物、ジャムに蜂蜜をたっぷりのせたそれは、赤井さんに非常に好評で

「料理できたのか」

とつぶやいた彼に現代の料理の元がいかに進んでいるか語ることとなった。

今日の残りの時間をどうすごそうか。
そんな会話をしていたときだった。


この1週間一度としてなることの無かった赤井さんの携帯が、音を立てた。

___今度こそ本当の、タイムリミット___

よぎったそれに笑うことしかできなくて。
電話をとる赤井さんから距離をとった。

おにぎりでも握ったら食べれるかな。
そう思いながら大きめのおにぎりを握っていれば、寝室からでてきた赤井さん。
その表情は、この一週間、否1日目以降、一度としてみたことのない真剣な色を宿していて。

「___すまない、

そんな彼に私ができるのは、彼の帰りを待つことなわけで。
玄関まで見送り、おにぎりを渡す。

「行ってらっしゃい___」

この人が私を思い出すときに、一番すぐに浮かぶのが笑顔であるように。
笑え、笑え、言い聞かせて。

「帰りを待ってますね___秀一さん」

私の言葉を聞いた彼が答える間もなく、玄関の扉は閉まった。
と、思ったら開いた。

「Shit!」

そんな叫び声。
同時に頭をがしがしとかき回す赤井さん。
え、どうしたの?

「え、ちょ、まって!」

答えを聞く前に、ぐ、と手を引かれて、気がつけばいつもみたいに彼の腕の中にいた。
ぎゅう、と抱きしめられて、そのまま離されることはなく。
とてつもなくスムーズな流れで抱え上げられた。
なんてことだ!

「こんなかわいい子猫を一人寂しく家においておくわけにはいかないからな。おとなしくしてろよ、kitty」

まさか!こんな流れで!

彼の仕事を知ることになるとは思わなかったし!!
彼の職場に紹介されるとは思わなかったし!

まさかの事件現場で工藤君にすごい目でみられるとは思わなかったし!!

そこにいた世良ちゃんにお姉ちゃんになるんだね、と喜ばれるとは思わなかった!!









はじめに惹かれたのはその瞳

宝石のような、きらきらとした飴玉。

きっと口に入れたらとてもおいしいんだろう、そう思わずにはいられなくて。

自分よりも大きな体を支えられるだなんて思わなかった。

それでも、助けない、だなんて選択肢はどこにもなくて。

結果、怪我をしたのは私だったけれど。

あの腕に、力強く抱きしめられたそのときに、きっと私の心はもう捕らわれていたんだとおもう。



びっくりするくらいの量の料理。

私以上においしそうに食べる姿に目を奪われて。

送り迎えをするそのエスコートはいやに丁寧で。

心が傾いていくのを止めることはできず。

どことなく抜けた表情に感情をわき上がらせられて。

愛しいと思わずにはいられなくなっていた。

好きと、伝えてしまえば楽になるかと思えば、そんなこともなく
嫌いだと思うには、育ちすぎたこの感情。


彼の一番になりたい

それは嘘じゃなく

でも、彼の足かせになるわけには行かない

それも真実で。

あなたが幸せでいてくれれば、そう思うほどには大人ぶれて

その側にいるのがわたしであればと願わずに入られないくらいには子供で


せめぎ合うのは相反する思い


あなたの瞳に映りたい
 その瞳がただ真っ直ぐに前を向いているならばそれだけでいいのに

あなたの声に呼ばれたい
 わたしを呼ぶことが無くても、この耳にあなたの声が届くだけで幸せになれる

あなたの腕に触れられたい
 力強く引き寄せてくれるその腕は、決してわたしのものではない

あなたの作った料理が食べたい
 たくさん作って、それを自分で食べて、笑うようなそんなあなたでいて欲しい 

あなたのそばで、生きていきたい
 私のそばでなくても、生きてさえいてくれれば、それで満足

私をみて、笑ってほしい
 わたしの側だけで、泣いてくれたらどうしようもないくらいうれしいだろうに

あなたの妨げになるならば、私を忘れてくれていいから
 本当は、私を忘れてほしくなんて、ない




けれど、そんなわがままな私を、あなたは突き放すことは、なく。




その腕の中に迎え入れてくれた

その声でわたしの名前を呼んでくれた

その瞳で真っ直ぐにわたしをみてくれた

その足で確かにわたしに近づいてくれた



あなたの一番じゃなくてい
あなたの中に少しでいい、居場所があれば。


そんなわたしをあなたはまぶしそうにみて笑ってくれて。



わたしに、大切にして欲しいと言った
自分の変わりに、大切にして、と。

わたしが帰る場所になって、と言った
自分が帰ってくる日常になって、と。




ならば、わたしは、その言葉に応えたい。

お帰りと声をかけて。
がんばったね、と頭をなでて。
お疲れさまと抱きしめて。


そんな存在に___



私は、なりたい
































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