降谷さんが好きすぎてストーカーするけれど、生活力なさ過ぎて、降谷さんにダメだしされるお話










疲れ切った体で入った自分の部屋。
いつも通り生活感のないはずだった、その部屋は___
なぜか、この1週間の間で、とんでもなく生活感のあふれる空間になっていた。

「・・・・・・なんだこれは」

つぶやいた自分の声はひどく弱々しく。
帰ってきて早々巻き込まれるめんどくさそうな気配にため息しかでない。

玄関入ってすぐの洗面所には、ぼろぼろになった洗濯物が。

きれいに掃除されていたはずの廊下にはなぜか湿っぽい洗濯物がころがっていて。
ゆっくりと辿って進んでいった部屋の中。
部屋に広がる、何ともいえないにおい。
おそらく、食べ物だろう、と思う

テーブルの上、並べられた、お皿や茶碗。
ラップがかかったその下には、がんばって作ったとみられる料理の数々が。
___僕って彼女いたっけ?
そんな阿呆な事を考えるくらいには頭がおかしいわけで。

ぺり、と開いたラップの下、所々焦げた料理のそば、メッセージが書かれた紙があった。

”いつもお疲れさまです。家でくらいゆっくりなさってください”
”暖かいご飯は炊飯器の中にあります。今日の肉じゃがは昨日のよりもうまくできた気がします”

今この瞬間、この手紙のせいで家ですらゆっくりできなくなったことを、この送り主は気づいていないのだろう。
ぱかり、ひらけた炊飯器。
たかれたお米はほのかに柔らかく___暖かみは、ない。
炊飯器から延びるコンセントを辿っていけば___コンセントは差し込み口とは仲が悪いのか、きれいにすっぽ抜けたままで。
確かに炊飯器の中には、ある。
しかしながら、あるだけだ。
温もりなど提供してくれない。
さらに言えば、肉じゃがは___

行儀が悪いとわかってはいた。
職業柄してはいけないことだとわかってはいた。

けれど、どことなく食欲をそそられる、食卓のにおいに、僕は飢えていたのだろう。
手でつかんでその肉じゃがのじゃがを口に運んで___

ごり

「・・・・・・かたい」

ごりりとした感覚。
おそらく炊き切れていないのだろう。

代わりに、とお肉を口に入れてみる、が___

「おいしくは、ない」

冷たいご飯にかたいジャガイモ。
この作り主は本当に僕を休ませる気があるのか?


かちり、僕の中、火が灯った。

おいしいものを食べたい。
どうせ作るならおいしいものを持ってこい。

かかれたメモ、それを裏返して認める文章。

”肉じゃがのおいしい炊き方”
”炊飯器のスイッチを確認すること”
”洗濯物の回し方”
”掃除機のかけかた”

一通り書いて、満足した。
この肉じゃがはアレンジを加えて食べよう。

すこしくらい、次改善されていればいい。

そんな思いを抱きながら、台所に向かった。








※※
降谷さんつかれてるのよ……