ドリーム小説






助ける  TOVから術使いがトリップ。
























ぽい、とばかりに世界から放り出されて、私は知らない世界に落とされた。
そこは、海賊がひしめく世界。
”私が生まれた世界”ではない世界。
私が操る術を使う人はいない。
代わりに悪魔の実、というものが存在する。
一口食べれば、水に嫌われるかわりに超人的な能力を手に入れることができる、魔法みたいな食べ物。
味は大変まずい、というのは食べた人の話だけれど。




私が落とされたのはとある船。
ばちり、目を覚ましたとたん目の前に厳つい顔が広がっていたときは冗談抜きで泣いた。
わんわんと驚きと恐怖と意味の分からない境遇に対する絶望でなき続ける私を前に、強面な彼らはおろおろとすることしかできなくて。

「ユーリ、助けてよ・・・っ」

頭の中、大事な友に、仲間に助けを請う。
返事なんかあるわけないのに。


この世界に、彼らはいないのに。



「ほら、もう泣くなよ。」

彼らを想い泣き続けていれば、ふわり、優しい温もりと浮遊間。
そして、とても柔らかな声。
驚いて思わず顔を上げれば、そこには雀斑を散らした黒髪の少年。


ユーリと、同じ髪の色。


困ったな、という顔をしながらも、なぜかその瞳はひどく優しくて。

「俺はエースだ。おまえは?」

なだめるようになでられて、警戒心なんか浮かばなくて。
それこそ、子供のように言葉を紡いだ。

・・・」

「そっか、か!よろしくな!」




それが、後に私のお兄ちゃんとなるエースとの出会いだった。




彼、エースはその後船長さんのところに私を連れていって。
あれよあれよと話をさせられて。
気がつけば船に乗ることを許されて。


そして、この世界で私は、かけがえのない家族を、手に入れることになった。





※※※※※※※※※※※※※




「戦闘だ!非戦闘員はさっさと中に入れ!!」

叫び声。
響く言葉の意味を私はもうしっかりと理解している。
非戦闘員。
その言葉は私にはあわない。
だって、たとえ幼く見えようが、私は戦うすべを持っている。
それこそ、この世界の誰もが使うことができない方法で。

腕にはめた魔導器をするり、なでる。

うん。大丈夫。

この世界でも、使える。



一歩、戦闘へ足を進める。


!中にはいれっていったろい!!」

が、それはなぜか毎度毎度心配症な兄たちに止められるわけで。
今回は蒼い色の長男が、私を捕まえて船内へぽい、と放り込んだ。
乱暴な仕草。
それでも、投げる人もいれば、受け取ってくれる人もいるわけで。

、中でおとなしくしてろって。」

少し困ったようにリーゼントの兄が笑う。
ぽんぽん、と頭をなでられて、子供のようになだめられて。
戦える、そう何度宣言したところで取り合ってはもらえず。

今回もやっぱり、船内に押し込まれるだけで。

「怒るんじゃねえよ。」

非戦闘員を守るのは今日は黒髪美人の兄。
くしゃり、なでられた頭を無視して視線をはずす。
そうすればくつくつとさらに笑われて。

「兄はな、かわいい妹が大切なんだ。たとえおまえさんが戦えるとしてもな、自分の手で守ってやりてえんだよ。」

そんなことを言われたら、すねている自分がばからしくなる。
そっと兄に向きなおって、ぎゅう、と体に抱きつく。
小さな声でつぶやいたごめんなさいとありがとう、それが聞こえたらしい兄はどういたしましてと返してくれた。







※※※※※※※※※※※※※





!」

私が来るまで末っ子だったらしいエースは、私に異常なほどにかまう。
つりをしたり昼寝をしたり、ストライカーに乗せられたり。
どちらかというとインドアな私には時々きつい。
けれども、私があの世界を思って沈みそうになればいつの間にかそばにきてくれる人でもあって。



炎の能力者。



そんなのは関係なく、エースのそばはすごく、暖かい。
いつの間にか、エースがそばにくるんじゃなくて、私がエースを捜すようになって。
エースが私を呼ぶよりも私が呼ぶ回数の方が増えて。
私とエースを、兄たちは優しい目で見守ってくる。
末の妹と弟が仲がいいのはすごくうれしい。


そういわれたときは思わず二人で笑いあった。


「俺は弟がいるんだ。」

エースはきらきらした瞳で弟のことを語る。
エースの弟と言うことは、私の弟と言うことにもなる。

(あえて兄という可能性は排除。)

見せてもらった手配書は満面の笑みを浮かべるかわいい男の子。

「あってみたいな。」

そうつぶやいた私にエースはいつか一緒に会いに行こう、そう約束してくれた。








なのに、ねえ。


どうして、エース。





目の前に広がる赤。

広がる混乱。

消えたストライカー


そして、裏切った男。



「サッチお兄ちゃん。」


つぶやいた声は、ゆるり、地面に落ちる。

こぼれていく赤は、彼の命を消していく。





大事な兄を一人手に掛けて、大切な兄が一人追いかけたのは、




あのおとこ。




ゆっくりと、兄との距離を積める。

マルコ兄が止める声なんて聞こえない。




だって、だって、まだ、死んでない。





サッチ兄は、まだ、生きている。





右手の魔導器をなでる。

大丈夫、まだ、使える。




この世界でも、これは、使える。









「____彼のものを、」




きぃん、と広がる、術特有の気配。


ぶわり、沸き上がる風に、皆がいきを飲む。




大事な兄を、大切な家族を、失ってなどやるものか。



「___死の淵から呼び戻せ。」






あたりに広がるまばゆい光。




お願い、お願い、つれていかないで。



エステル、ユーリ、お願い手伝って。






「____レイズデッド」





光が静まったその場所には、ぱちくりと目を瞬かせるサッチ兄が、いた。















※※※※※※※※※※※※※












「エースが捕まった。処刑される。・・・そんなのを、見過ごせと?」

あたりに広がる覇気。
それによって多くの仲間たちが地に伏せて。

それでも、末の妹は全く同様もせずに立ち続けていた。





はじめはただのちいせえがきだと思っていた。
戦える力はある、その言葉も強がりだと。
たとえそれが本当でも俺らが守ってやればいいと。


それが覆されたのはあの事件。


ティーチがサッチをさして、エースがそれを追いかけていったあの日。
もうどうやっても助からないと言われたサッチを、末の妹は謎の技を使ってあっさりと助け出して。

エースを連れ戻しにいく。

そういって船から飛び出そうとした妹をみんなで必死に止めた。
親父の必死の説得により、今は何とか船に乗り続けていたが、数日前、エースが捕まった件でどうやらぷっちんきたらしく。
かわいい笑顔を見せることはなく、今にも船を飛び出さんばかりで。


そしてそんな状況で現れた赤髪。
奴が述べた、ティーチから手を引け、という言葉。
それはつまり、エースすら切り捨てろと言う意味にも聞こえて。


「___我が怒りを具現化せよ___」


ぼそり、横から聞こえた小さな声。
それが意味するところを悟り、ぎょっとする。

「おい、まつよい!!!」

「___タービュランス!!!!」

あえての風を選んだのは唯一の良心か。

突然すぎる突風に、赤髪たちは対処できるはずもなく、飛んでいった奴らをあわてて助けにいった。








※※※※※※※※※※※※※









エースの処刑が刻一刻と迫る中。
親父様のそばに、立つ。
先陣を切ろうとしたらマルコ兄に止められた。
まあどちらかというと後方支援の方が生にあってはいるのでうなずいて。
ちなみに先陣はサッチ兄。
一刻も早く生きてるよ、と弟に伝えたいらしい。
親父様の横から、術をしかけて、回復を促して、攻撃力をあげる。
私のその力のおかげか、味方の方の被害は比較的少なく、敵の被害は甚大で。

「怖いねえ、その力。」

黄色がきたときはちょっとだけひやっとしたけれど、マルコ兄が防いでくれて。
砂の人が現れたときは、結構本気でびっくりしたけれど、すぐ後に例の弟が姿を現して。

「エースが気に入ってんだ。」

予想道理かわいかった。

「おまえ、エースの妹?なら俺の妹だな!」

この戦いが終わったら姉だといわしてやる。

スクアードさんの剣を親父様が受けたときは全力で回復をして、(キュアを連発した。)エースの弟の先を作るようにタービュランスを使いまくって。
サッチ兄の障害物を壊すようにネガティブゲイトしたら危ないって怒られたけど。
エースの助けになるようにイラプションを生み出して。
味方識別をかけたホーリーランスで敵は地面に倒れ伏し。


そして、親父様が一人残ろうとしたのを、娘を泣かすのか!!と一喝して。

親父様への侮辱を受けたエースが立ち止まり、弟と赤い人の間に体をねじ込んだ瞬間、






「タイムアロー」

ついこの間拾得した時間を止める術を使ってみた。


唖然とするみんなの顔を全力で無視して、現れた潜水艦にエースと弟を放り込み。


時間が止まったままの海軍をそのままにさっさと海に出向して。









とりあえず、家族を守れたからいいかな、と
術の使いすぎで一週間寝込むことになる体を闇に落とした。






























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