ドリーム小説
仮面夫婦なおはなし
私の旦那様は、この世界できっと、誰よりもよく知られている人。
神子様、その地位を、旦那様は持つ。
この世界のマナが失われ始めたときの救世主。
この世界の、希望。
そんな旦那様は、いつだって家には帰ってこなくて。
よい血筋を残しなさい。
両親からその言葉だけを告げられて、いつの間にか、この家に嫁ぐことになっていた。
意味が分からないと嘆くほど、頭は悪くない。
つまりは、あの神子様のお嫁さんになって、そうして、次の神子様を産み落とせと、そういうこと。
私だって、人並みに女の子だから、理想とか、あこがれとかあったけれど。
それに逆らえるほどの力は持っていなくって。
早々に、あきらめて、しまった。
私の部屋で、毎夜毎夜、旦那様を待つけれど、あの桃色をまとった人は現れることはなくて。
執事さんが申し訳ないとあやまってくれるけれども、それに笑って返すしかできなくて。
はじめは、ただ単に、ほかのきれいな女性のところに泊まり歩いているんだと思っていたの。
でも、そうじゃなかった。
「神子様に謀反の疑いがある。疑いがはれるまでは伴侶であるお前も拘束する。」
突然、屋敷に土足で現れた騎士たち。
告げられた言葉に理解は追いつかず。
どういうこと、とつぶやいた言葉は空気に溶けて。
一度もまともに夜を過ごしたこともない。
ちゃんと名前だって呼ばれたこともない。
顔だって、きっと向こうはしっかりと覚えてはいない。
肩書きだけの妻
旦那様が帰ってくるまでは拘束すると。
されたところで、旦那様が私を助けにくるはずもないのだけれど。
暗い暗い地下牢で、湿った空気の中、助けにきてくれるはずもない、あの人を、ただ思う。
せめて一言だけでも、言ってくるの言葉でも、あったならば、きっとこんな気持ちにはならなかったわ。
肩書きが、ただ、私を縛る
「ハニー。なぁにこんなところに閉じこめられてんのさ」
突如開いた扉の向こう。
桃色が光と共にのぞく。
「どうしたんだ、ゼロス」
「知り合いかい?」
後ろにたくさんの人を連れて、旦那様は現れた。
「女の子?」
「怪我とかはしてない?」
金色の女の子が、銀色の男の子が、私に優しく声をかけてくれて。
「これくらいなら開けられます」
ピンク色の女の子が、斧を振り回して鍵を開けてくれて。
「大丈夫かしら?」
「立てるか?」
銀色の女性が問うて、青色の男性が手をさしのべてくれた。
起こっていることが理解できなくて、そっと見上げた旦那様は、今まで見たこともないくらい、穏やかな表情をしていて。
「さ、帰ろっか」
手を、私の手を引いて、体を抱き上げて、くれて。
「あ、この子、俺様の奥さん」
ぎゅう、と落ちないようにとしがみついた温もりにほっとして、旦那様の言葉に、驚いて。
「ごめんな、ほったらかしにしちまって」
「これからはちゃんと一緒にいるから」
籍を入れたその次の日から、旦那様は旅にでていて。
私をおいてきてしまったことを気に病んでいて。
嫌われていたわけじゃない、それがわかればもう十分なのです。
ゼロス
とりあえず神子の血を絶やしてはならぬ、ということで頭が良くて気だてもよくて、血筋も悪くない子を選抜。
選ばれて婚姻を上げてそうそう旅に出たゼロス君とその帰りを待つ夢主さん。
色々巻き込まれたりしたけれど、幸せな結果に持って行けた気がしなくもなくはない。
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