ドリーム小説
仮面夫婦なおはなし
「俺がお前と一緒にいる意味を、はき違えるな」
癖一つない長い黒髪
すべてを見透かすような澄んだ瞳
低い声は耳を柔らかく溶かして、私の意識を釘付けにする。
そんな私の旦那様は、とてもとてもきれいな顔で、笑みで、私に毎日のようにつげる。
帝都で突如現れた流行病。
感染症と呼ばれるそれは、放っておけばすぐさま死へと直結する。
貴族であればすぐに治療を受けられるけれど、金銭的に余裕のない下町にとっては恐ろしいもので。
私にとって、それは、とても、好都合なことだったけれども。
だって、だって、ずっと望んでいたあの人が、手にはいるんですもの。
薬を、医者を提供することと引き替えに、私は彼を手に入れた。
これから先も決して私に屈することはないであろう、美しい人を。
助けるためであれば、自分の身を犠牲にすることすらいとわない勇ましい人を。
「旦那様」
私が名前を呼べば嫌そうな顔をしながらも振り向いてくれる。
一週間に一度はこの屋敷に戻ってきてほしい。
その一日だけでいいから、私と夫婦として過ごしてほしい。
私の言葉を聞き入れたあなたは、ちゃんと一週間に一度だけはここに帰ってきてくれる。
どんなに嫌だろうと、悔しかろうと、そのときだけは、私のもの。
普段あの場所で、優しい人たちに守られているあなたを、ここで守る人はいない。
いつだって、私を責めるようにあなたは見る。
いつだって、嫌っていると前進で表す。
それでも全くかまわない。
だって、彼がそんな激情をむけるのは、きっと私だけだから。
屈さないあなたを、閉じこめること、それが私の楽しみね。
何度もみたの。
あなたがとてもきれいに笑うところを。
その横に立つ、桃色の少女を。
蒼色の、美しい女性を
橙色の可愛い女の子を
いろんな方が言っていたわ。
あなたが、あなたたちが、この世界を救ったと。
私はそのとき、お父様につれられて、帝都を離れていたけれど。
そんな仲間たちの中に割り込めることはないとあきらめていた。
貴族を嫌うあなたに、私を見てもらう方法などないと、知っていた。
あなたがほしい
その感情は日に日に強くなっていって。
私へと向けられる、無関心以外の、特別な何かがほしい。
それが、たとえ、嫌悪でも
そうしててにいれたのは、形だけの夫婦と、その時間。
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