ドリーム小説






からからまわる せかいにて





※※※
トリップして役に立とう!!と思った女の子
身体能力も知識もすべてにおいて人並みしかない彼女を拾ったパーティメンバー。
ついてこようとする彼女を引き離すメンバーとついて行こうとする女の子の話。
※※※








「私はこれからを知っているの!」

私の言葉は彼女たちには響かない。

「預言でしょう?」

それはこの世界を縛る、単語

「そうじゃなくて!!」

私が言いたいのはそんなことじゃなくて。
知っているの、本当に、全部全部。

「足手まといだと認識なさい」

それでも、青い色の軍人さんは、きれいなあまいろの髪の彼女は、私を引き離そうとする。

「私はきっと役に立つよ」

だって、私は知っているもの。
この世界の行く先を。
預言なんてものじゃない、これからおこる、出来事を。

レプリカルークがアクゼリュスを崩壊させるのも、死霊使いがレプリカを生み出したのも、お姫様が本当のお姫様じゃないことも。
従者が刃を向けたい先も、導師守護役がスパイで導師を裏切っちゃうのも、そんな導師もレプリカでいつかいなくなっちゃうのだって!

全部全部、知ってるから、だからこそ、私は助けたいのに!!

「お願いつれていって!!」

それでも、やっぱり、うなずいてはくれなくて。

「危険な旅に、あなたのような一般人を連れてく訳にはいきません。」

「うぜーっつーの。さっさとどっか行けよ」

緑色の彼は見かけによらない強い瞳で、赤色の彼は心の底から面倒そうに。
あなた達二人を助けたいの。
生きていて、ほしいから。


「かわいい女の子の頼みだから聞いてあげたいのは山々なんだけどね・・・。」

「おとなしくおうちに帰った方がいいと思いまーす!」


金色の王子様みたいな彼は苦笑して。
ツインテールの人形使いはまっすぐに私を見つめて。

あなた達二人が抱える闇を、知ってるのに、わかってるのに!!


置いていかれたカイツール。

なれば、私にできるのは、彼らが行く先を、向かう先で、待ちかまえることだけ。

だから、向かった。
危ないとされるその場所に。
他の制止の声など聞かないで。



「どうしてここに?」

「アクゼリュスが崩壊するの!」

「またあなたですか」

たどり着いたアクゼリュス。
私の主張は理解されないまま。
たしなめるような言葉の中に含まれているのは、嫌悪の色。
それでも、私には必死で伝えることしかできないから。

私の言葉を振り切って奥へと向かっていった彼らを、彼女たちを、必死で追いかけようとするけれど。
足手まといのままの私じゃなにもできなくて。

ぐらり、ひときわ大きく揺れた世界の中で、簡単に崩れていく足場。
もろく、たわんでいくこの場所は、もう、取り返しはつかない。

届かなかった、響かなかった。
私の言葉は彼らにも、誰にも。

落ちた衝撃で打ちつけた顔が、体が、いたい。
けれど
まとわりつくどろどろとした感触に。
鼻を突く異臭に、
薄れていく意識の中に、


ああ、これで元の世界にかえれる、と

そう思った、の、に___




「目、さめたの」



開いた先にはれぷりか導師、の生き残り。
結局元の世界には帰れず、また、この場所で目を覚ます。
私は、まだ、こんな世界に生きているんだ。

伝わらない思いに、たどり着けない感情に、体を犯す絶望に、

できることなどなにもなく。

涙なんてでてこない。

「ねぇ、」

捻りだした声は、掠れている、どころじゃなく。
がらがらでどろどろで。

自分のものとは思えないほどに、醜い。

「なにさ」

けれどそれを気にする様子も見せず、レプリカ導師は言葉を返す。

「ここに、いさせて」

醜い声は、それでも彼に届いたようで。
くつり、あざ笑う声。

「なに?あの導師たちに捨てられたから、次はこっち?」

その言葉に痛む心だって、もう、もちあわせちゃいない。

「そう、あの場所が私をいらないって、いうなら」

それでもこの世界で生きて行かなきゃいけないならば。

「私は居場所を探さなきゃ」

私の言葉に、レプリカ導師は愉しそうに笑った。









「ど、して・・・?」

怪我をした顔を隠すためにつけていた仮面。
からり、乾いた音と共にはずれたそれ。
中から現れた私の顔を見た瞬間の彼らの顔ときたら!

ぽつり響いた言葉は紅色の主人公のもの。

生きていたのとつぶやく声に、おかげさまでと返して見せれば。
私の発した声に、言葉に、嫌悪感が沸き上がる。

「なんっで、知ってたなら、知ってたなら教えてくれよ!!」

叫ばれた、その内容。
なにをバカなことを。
浮かぶのは嘲笑。

「私は何度も言ったよ?伝えたよ?」

それを聞かなかったのは、君たちだ。
私はちゃんと、知っていることを、告げたじゃないか。

「あんな冗談みたいな言い方が本当だなんて思えなかったわ」

だから?
それは私のせいじゃないよ。

「聞いてくれなかったのは、あなたたちだよ」

私はこの世界をすくいたかった。

緋色の彼に罪を背負って欲しくはなくて
あまいろの彼女に兄を憎んで欲しくはなくて
死を理解できない軍人の傷をえぐりたくはなくて
従者の彼に痛みを繰り返して欲しくはなくて
幼い導師にいなくなって欲しくはなくて
隠し事を重ねる守護役にこれ以上泣いて欲しくはなくて
金色のお姫様に真実を知って欲しくはなくて

だから、私は私なりにがんばった。

彼らに過ちへの道を避けさせようと。
私にできるせいいっぱいで動いて。
お金だってそんなものもっていなかったから。
私にできる、唯一の方法で手に入れて。
届かない言葉を叫んで。

けれど、それを拒否したのは、君たちだ

「私の言葉なんて全部聞かないふりをしたくせに」

「それはっ___」

導師守護役がもどかしそうに唇をかんだ。
その後ろ、守られる導師はなにをいうでもなく、まっすぐに私をみていて。

「___」

呼ばれた名前。
それは、確かに私のものだった名前
この世界で呼ばれることなんてなかったから、とっくに忘れられたものだと思っていた。

少しだけ、どこかが、いたんだきが、した。

けれど

「ごめんね?今更なにを言われても、響かないし傷つかないんだ、私はもう」

壊したのはあなたたち。
あなたたちに私が不要なように。


私だって、あなたたちはもういらない。

「シンク」

静かに私の後ろにいた彼に声をかければなに、と簡的な返事。
くるり、振り向いて彼のそばに。
そのまま彼らに背を向けて。


「全部、壊しちゃえ」


小さなつぶやきに、彼はあざ笑った。








※※※
そう言いながら、レプリカ導師を見捨てられず、最終的に手を出してしまうんだろうな、と。
理不尽なパーティメンバーを書きたかった
アビスのメンバーはほかのシリーズと違ってぎすぎすしてることが多いけど、それでも一番人間らしいキャラたちで、好き。

シリーズにしようと思ってたけれど気力が続かなさそうなのでとりあえず単作で。





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