ドリーム小説








劉輝




それはこの世界で生きるわたしにとって唯一の友。
たった一つの存在意義。
君が傷つくのも、涙を流すのも、みたくなど、ない。

でも、ごめん。

わたしは君のそばにいて、涙を流す君を慰めることしかできないんだ。
これから先、起こること。
君に降り懸かることも。
わたしはすべて知っている。
でも、知っているだけなんだ。
この手をだせば、何が変わるかわからない。

あれが最善だとは思えないけれど、あれ以上の最善を、わたしは知らないから。

だから、わたしは今日も、君にうそをつく。

ねえ、まだあのときはきていないけれど、どうか、どうか、お願いだから、はやく、この悲しい王様を助けて。






「何?りゅうき」

まだ幼いわたしの口は、決して上手には発音できなくて。
もどかしく感じながらもわたしは答える。
呼ばれる名前は劉輝がくれたもので、わたしのたった一つの所有物。

たったひとつの宝物

「紅の姫が、後宮に入るらしい」

言葉少なに述べられたそれら。
憂いを帯びたその瞳に映るのは今も昔もたった一人、あの人だけ。
わたしは、あの人が好きではない。
お話の中の彼はたった一人りゅうきに優しくて、大事に大事にしていたけれど、いずれいなくなる身であるならば中途半端な優しさなど、必要なかったのに。

あなたは、りゅうきをより一層、孤独に追い込んだの。

この世界でたった一人、誰よりも優しくて孤独な王様。
未だその手に入るであろうものを知らず、全てを取りこぼしていることに気づかぬ哀れな彼。
彼が歩む道は過酷で、卑劣で、たったひとりの女のために動くその様は、人によってはひどく馬鹿らしくも思えるもの。

それでも、この人は確かに王であり、人であった。

何もかもをあきらめた王が、たったひとつだけ望んだもの。

あなたがそれを望むならば

「りゅうき、りゅうき」

わたしをみて、わたしはここにいるの。
あなたのそばに。
あなたを救うことは、わたしではできないけれど。
あなたを愛することは、わたしでは約不足だけど。
それでもわたしはここにいる。
たとえこれから先何が起ころうとも、
たとえこれから先何があろうとも。

私はただあなたの友でいることを誓う。

さあ、物語が始まる。

運命の歯車は互い違いに絡み合って。
たった一つの未来のために動き出す。
人の感情も欲望も何もかもを飲み込んで、世界はゆるりと動き出す。














※※※※
彩雲国でお話作るとしたらこんな感じになるんだろうなあ、という序章。
話だけは決めているけれど、何分傍観みたいになってしまうので十中八九お話に関与しない。
気が向けば続きが書きたい。
・・・いつになるやら。

生まれ変わり。
生前にこの話をよんだことがあった。
この世界に生まれたときは、王位争いで一番あれた時。
捨てられてさまよっていたときに、劉輝にひろわれるよ。






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