ドリーム小説








私にしかできないことはたぶんたくさんある。
それでも、それらに手をかすかどうかは私が決めること。

そして、私は決めたの。

私が知る世界に至るように。
暗闇におびえるこの人を。
たった一人の王様を守るために。
たった一人のこの人の「友達」であるために。
すべてに背を向けて、生きるの。
卑怯と言われようと、ろくでなしと罵られようと。

ただ一つ、私が知る世界にいたるために。



綺麗な綺麗な紅のお姫様。
彼女がこの場所にきた実際の理由を私は知っている。
彼女をねらう人も、それに伴う黒幕も、この事件によって誰が死ぬかも。
狸じじいと呼ばれるあの人が、王様に願うこと。
それに気づかぬ王様。
まだ、今はいい。
今はまだ知らぬままで。
いずれわかってしまうことだから。



私の友達の数少ない味方。

「こんにちは。ご様子はいかがですか?」

ふわふわ笑う、紅の父。
不器用なように見えてその裏冷却な顔をもつ暗殺者。
深く深く、娘を愛するが故、娘に夢をあきらめさせることのできなかった愚かな人。
愚かでそれでいて強い人。


「おや、かわいらしいお嬢さん。こんなところに迷い込んでこられたのかな?」

藍の名を持つ美男子。
その手で大事な守護を失ってしまった人。
迷いの末、家よりもなによりもたった一人主に絶対の忠誠を誓った人。
そして唯一王に最後までともにあることを許された人。


「子供!ここになにしにきた!」

最年少の国試及第者は、紅の当主に拾われた女嫌いの少年。
紅の姫の師であり、友であり、相談者である人。
そして王の師でもあり、従者である人。
<最後まで迷い大事な何かをつかみ損ねそうになる人。



元暗殺者は王様のよき相談相手であるよりも先に、一人の父親で。
側近と呼ばれる二人は、まだ信頼を手に入れられることはなく、信頼をもらうこともできず。
紅の姫とはまだ埋まらない距離があって。

だから、私はその人たちがそばにくるまではずっとずっとあなたのそばをはなれはしないよ、

「りゅうき」



呼ばれる名前、たった一つ私のもの。
私だけの名前。
この人がくれた、この友人がくれた、大事なもの。

「りゅうき」

王になってしまったこの人を、名前で呼ぶ人などほとんどいない。
その中の一人に、なりたくて、何度も何度も意味もなく名を紡ぐ。

に名前を呼ばれるとすごくうれしいな」

少しでもあなたが安らげるように、少しでもあなたが笑えるように。
抱く想いは恋情ではなく。
この愛情はまるで母のように。

どうかどうか、未熟な王に今一度の救済を。


真綿でくるむように温かく。

















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