ドリーム小説

逃げ脚だけは一流です 2-25









オリジナルとレプリカは別の存在である。
そう主張するルーク。
それを一番認められなかったのはアッシュで。
目指すところは一緒なのに、互いが生き残るべきだと押し付けあって。
自分の犠牲の上に世界が平穏を取り戻すのであれば。
己の犠牲など厭わないと、彼らは叫ぶ。

その結果もたらされる未来に残る確執を、理解しているのに。

必要とされたいと、願いながら、死んでいくしかないのだと、
それは、ひどく、苦しい主張



エルドランドで待つ、と。

アッシュはそう言ってルークを振り払って。
声を上げたナタリアすら、怒鳴りつけた。

「アッシュも馬鹿だね」

シンクのあきれたような声。

「シンクっ、」

反応したルークに対して、シンクは冷ややかな目を向けて。

「ルーク」

静かな声に、ルークの感情が一気に冷まされる。

「認めているからこそ、認めたくないなんて言うんだよ」

ルークが息をのんだ。

「あんなに感情を高ぶらせるんだよ」

その存在をよく知っているからこそ。
その存在そのものを認めているからこそ。
そばにあることを怖いと思って。
自分の驚異に感じて。
そっと、ジェイドさんから見えない位置で、すがるようにシンクの手が、私をつかんだ。
答えるようにぎゅう、と握れば、は、と一つ息を吐いて。
ゆっくりと手を離して、シンクは笑った。

「だって、僕がそうだったから」

まっすぐにイオンを見つめて。
それを受けてイオンはそっと耳を傾ける。
シンクの言葉を一つも聞き逃さないように。

「僕の生まれるきっかけだったオリジナルイオンが嫌いで」

レプリカのオリジナル。
それがあったからこそ、シンクは生まれて。

「僕が捨てられる原因だったイオンが憎くて」

能力がオリジナルに近いイオンがいたからこそ、シンクは捨てられて。

「話を聞くのもいやだったのに、それでもその行動が気になって仕方がなくて」

その行動を、把握するために、遠ざかることもせず。

「どうでもいい存在だったらそうはならないでしょ?」

おどけたようにルークに告げた。

「負の感情だったとしても、それでも、アッシュはルークを認めていたからこそ、そこまで声を上げるんだよ_、と」

「シンク!!」

話を遮るようにイオンがシンクに飛びついた。
それを危なげもなく受け止めて、シンクは小さく笑った。

「今の僕に取って、どうでもいい存在じゃないんだよ、イオンは」

その言葉に感極まったように、イオンはぎゅうぎゅうとシンクを抱きしめた。



かわいい弟たちの姿を眺めていれば今度はルークに手をとられて、そっと握られた。
ちらり、こちらをみたジェイドさんに気づかない振りをして。

はここに残ってくれ」

ぽつり落とされた言葉。
それの意図するところが分からないほど子供ではない。

_安全なところにいて_

そう願う気持ちを踏みにじりたくはないけれど。

「嫌だよ」

いくらルークの願いでも、それだけは叶えてあげない。
困ったような視線がこちらに向くけれど、知らない。

「最後まで一緒にいるって、そう約束したもの」

ルーク、他ならない、あなたが願ったのだもの。
それに、ね。

「私には最強の武器があるから、大丈夫、」

そう言って向けた視線の先、まだじゃれつくイオンとシンク。
かわいいかわいい弟たち。
私を守ってくれるあの子たちがいるのだから、だから、大丈夫。

「お願い、ルーク」

あなたがあの約束を無きものにしようとするならば

「最後まで一緒にいさせて」

今度は私が願う番。















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