ドリーム小説
おうち訪問 〜アニス〜
「って、お金持ち?」
アニスの言葉に思わず動きが止まった。
「アニス?」
真意が測れずに問い返せば、ことり、首を傾けるアニス。
「どれくらい儲かってるのかなあって思って」
言葉を偽ることもしない彼女はいっそすがすがしくて。
「うーん。そんなにだよ?たまに薬草も買ったりするし。それに自分の家、もってないからためる場所もないんだよね」
「そうなの?自分の家ないの?」
私の言葉にアニスは驚いた、と体全体で表現していて。
「もともとホドにあった自分の家はなくなっちゃったし。それに、あのころは小さすぎて家を借りれる年齢じゃなかったしねえ。宿屋とか、いろんなところ転々としてたら自分の家なんて持つことあんまり考えなかったかな」
家がないことを不便だと感じたことはなかった。
物欲も特になかったし、家に帰るという感覚は、きっとあの両親がいた家でしか感じられない物だったから。
「そっか・・・」
アニスのどことなく沈んだ声。
ちょっとうつむいて、何を言おうかと考えているのがわかる。
優しい子。
「だからね。アニス、今度アニスの家に招待してくれるとうれしいな」
「え?」
私の言葉に、ツインテールがふわりと揺れた。
「アニスのおうちが見てみたいなあって。・・・だめ?」
「だめじゃないよ!あ、けど、ちゃんと手みやげ持ってきてよね!」
少し恥ずかしそうに、けれども愉しそうに、アニスは言葉を紡ぐ。
年相応なはしゃぎかたにこちらまで楽しくなってきて。
「トクナガがいっぱいあるんでしょ?見てみたいな」
そう言えば任せて、とばかりに頷かれた。
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