ドリーム小説

よびかた 〜お姫様と〜









、一つお聞きしても?」

とある宿屋にて、お姫様が私に問いかけてきた。
先を促せば少しだけ迷ってように視線をさまよわせて、そうして私へと言葉を紡ぐ。

「どうして、私のことは名前で呼ばないのです?」

その言葉に横で話を聞いていたほかの面々がそういえば、とこちらへ視線を向けた。
突然の注目にいたたまれなくなりながらもお姫様を見返して笑う。

「聞きたい?」

その言葉に力強くうなずき返されて。
でも、まあ、その理由は大変くだらないもので告げるのは恥ずかしい。

「名前では呼んでくれないんですの?」

彼女の表情が悲しそうに変わるものだから思わず笑ってしまった。

・・・」

とがめるようなそれに、ふわり、笑って見せて。
仕方がないなあ、と思いながら言葉を紡ぐ。

「あこがれ、なんだよね」

不思議そうな顔。
首を傾げられて、恥ずかしいながらも言葉を続ける。

「お姫様って、やっぱりあこがれなんだ」

「ナタリア様は、私が思うお姫様そのもので。だからこそ、あなたを形容するその言葉を使っていたいんだ」

小さな頃、あの世界でも、この世界でも確かにあこがれたお姫様。
私には遠い遠い存在だった。
それが、今目の前にいるその事実。
確かめるためには名前を呼ぶのが一番で。
お姫様、お姫様
あなたを呼ぶのはそれが一番しっくりくるんだ。
私の言葉にお姫様は面食らったように言葉を噤んで、そうして一拍おいた後恥ずかしそうにほほえんだ。
その笑みはあまりにもきれいで、まさにお姫様と形容するにふさわしいものだった。














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