ドリーム小説
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ただただエースを助けたかっただけのお話。
「逃げ足だけは一流です」(当サイトTOA連載)から夢主()とジェイドさんトリップ。
夢主():現代(TOAのゲームプレイ済み)で死亡→TOAの世界へ転生。
若干TOAの記憶あり。ジェイドさんと友人以上恋人未満、的な。薬学に秀でる。逃げ足が早い。
TOA世界では主人公を助けたい一心で動く。が、失敗。原作道理に進んじゃう。
後悔しながら二年後、なぜか気づいたら海賊へトリップ、みたいな。
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今度こそ、助けるから
紅色の幼子を、私は守りきることができなかった。
あの場所で、彼のオリジナルと二人だけで、おいていくことしかできなかった。
知っていたのに、わかっていたのに。
世界を変えるには私の存在はちっぽけすぎて。
ごめん、ごめん。
信じてくれたのに、信じていてくれたのに、答えることができなくて。
ごめん、ごめん。
愛していたのに、愛していてくれたのに、守りきることができなくて。
浮かぶのは後悔ばかり。
二年、もうすぐ彼らが帰ってくる。
それでも、彼らは、ひとりになってしまっていて。
結局私は、何一つ未来を変えることなどできなかった。
____そう思っていたのに。
目の前に広がる刃刃刃。
厳つい強面のおじさんたち。
おかしな髪型の金色にリーゼント
テンガロハットの男の子。
あれ、この世界、知ってる?
あの世界の前の記憶。
つづられた物語。
これは、夢の続きなのだろうか。
いったいなにがおこっているのか、ここはあの世界ではないのか。
とりあえず、今できることは___
「・・・ごめんなさい、抵抗する勇気はないんで、できたら刃物おろしてほしいです。」
両手をあげて降参を告げることだけだった。
まさか、転成だけでなく、いわゆるトリップ、という奴まで体験することになるとは思っていなかったな。
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薬学の腕を買われて、医者助手に収まって。
なんとかこの場所で生活はできている。
ふとしたときによぎり続ける紅の友を、蒼い軍服の想い人を、そっと胸の中に隠し続けながら、私は異なる世界で生きていた。
隊長さんたちとは見事に接点はなく、(あの人たち馬鹿みたいに強いから医務室にこない。)他の隊員さんたちやナースのお姉さんたちと仲良くなっていっていて。
ついでに言うと隊長さんたちは突然現れた私を疑い続けているようで、ドクターにいろいろ探りを入れているらしい。
ちなみにドクターは「おまえみたいな奴に首を取られる親父さんじゃない。」とからからと笑っている。
解せぬ。
記憶の情報が確かならば、この世界はあの、世界のはず、で。
これから、おこることを、私は知ってしまっているわけで。
ぞくり、と、体がふるえる。
知っている世界を、変えれるかもしれない期待と
知っている世界を、変えられなかったときの絶望が、
体の奥からふるえを起こす。
紅の幼子を、助けられなかった恐怖が。
この世界を変えることを、躊躇させる。
怖い。
こわい
こわい
この世界には私を肯定してくれる人も、無条件で信頼してくれる人も、私を守ってくれるあの子も、疑い続けてくれるやさしいひとも、どこにもいない。
この世界には、私しか、いない。
たすけて、
叫び出しそうになった体をぎゅう、と抱きしめて、なだめる。
大丈夫、大丈夫。
きっと、あの世界に戻れる。
根拠のない言葉を繰り返して、自分をだまして。
だって、この世界に私の居場所は、ないんだから。
あの世界へいったときとは、ちがう。
私は、私のままでここにきた。
いつか、世界が飽きて、私を放り出してくれるはずだから。
そう、世界が、私に飽きるまで。
じわり、握った手のひらが熱を持つ。
自信を、つけるかのように。
”頑張れ、なら、大丈夫!”
紅の子供が、背中を押してくれた気が、した。
ならば、ならばやってみようか。
自分が思うとうりに。
今度こそ、世界を___未来を___
変えるために。
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とある戦いで、私の中に第七音素を植え付けた人がいた。
その力は大きくて、私にはなかなか使いこなせないものだったけれど、時間をかけて訓練するうちになんとかものにできるようになって。
結果、今の私は薬学の知識だけでなく、回復術及びサポート術も使えるようになった。
後半の世界ではなんだかんだで役に立ったそれ。
この世界でも使えることは、自分で実証済み。
それを、今使わずして、いつ使うと?
赤い色をながしながら倒れるサッチ隊長。
その前に立ちふさがり叫ぶエース隊長。
その向こうあざけり笑うティーチ。
カツン。
響いた足音に、ティーチの視線がこちらに向く。
同じように驚いたようなエース隊長の視線もこちらに向いて。
「エース隊長。敵から目をそらすのはおすすめできないですね。」
コツン
足を進めてサッチ隊長の元へ。
荒い息を吐いている隊長。
でも、まだ大丈夫。
この世界にはない技を、私は使うことができるから。
「サッチ隊長は任せてください。」
「なにをっ!?」
あらげられる声。
向けられる鋭い視線。
まだ、疑われているのは知っている。
それでも、少しぐらい”医者助手”としての力を信じてくれてもいいんじゃないですか?
「確信のない疑惑で、サッチ隊長を殺したいんですか!」
私の声にびくり、隊長はふるえて。
「あー・・・えーす、たぶん、だいじょうぶ・・・」
「しゃべらないでください。」
無理矢理言葉を発するサッチ隊長を黙らせる。
回復の術
ファアーストエイド
ヒール
キュア
でも、やっぱり、今は、
「この世界にはいないかもしれないけれど、ローレライ、」
まだ、早い。
この人をそちらの世界に逝かせるには
「力を、ちょうだいね。」
返して。
帰して。
この人がいなくなると悲しむ人がたくさんいるから。
「我が身に眠る、音素よ」
穏やかな眠りなんか、与えてあげません
「彼のものを、永き眠りの淵から遠ざけよ」
せめて私を信じてくれるまでは
「迫る闇から救い出せ」
「__レイズデッド__」
広がった光。
サッチ隊長やエース隊長の驚く顔。
いつの間にかいなくなったティーチに、きっと二人は気づいてなくて。
ぶわり、沸き上がる風。
私の髪を、服を、なびかせて。
世界に広がる奇跡の光
「お、まえ・・・」
エース隊長の声に笑って見せて。
「・・・?」
初めて呼ばれた名前にうなずいて見せた。
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「おまえ、本当に何者だよい。」
蒼い色の長男が、ひどく鋭い瞳でこちらに問いかけてくる。
それに苦笑いをこぼしながら告げる、本当の、こと。
この世界ではない世界からきたと。
その世界ではふつうに使われている力だと。
うろんげな視線をむけられつつも、今は三人の味方がいた。
「マルコ。どんな力だろうと、俺を助けてくれたのはだ。」
「すごかった!!ぴかーって光が広がって!!」
サッチ隊長とエース隊長の援護。
それにマルコ隊長はじとりとした視線を向ける。
「マルコ。」
そして、最後のボスである彼に言われれば、マルコ隊長は反論などできないわけで。
「・・・わかったよい。」
むすり、とすねたようにする彼は、見ためにあわず子供っぽい。
ちょっと笑いそうになる。
でも笑ったら非常に面倒なことになる気がするので、口元を整えて。
「。」
呼ばれたのでまっすぐに、マルコ隊長をみる。
そうすれば、困ったような、それでいて意地になったようなそんな曖昧な表情を向けられて。
「サッチを、たすけてくれて、ありがとよい。」
その言葉にやっぱり笑みをこらえきれずに漏らせば、とたんにむすりとした表情になる。
「疑って、悪かった。」
それでも告げるべき言葉は違えない。
とても責任感が強くて、優しい、この人は本当に長男みたいだ。
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エースが、ティーチを探しに船を飛び出した。
その知らせを受けたのは彼が出発してからだいぶんたってからだった。
と、いうのもドクターが私の術に異常なほどの興味を示したので、医務室にてドクターと缶詰状態だったのだ。
あーやっぱり、という気持ちが沸き上がって。
それでも、物語と同じ進み方にほっとしてもいて。
そして、今。
物語道理に、目の前には赤髪さんがいる。
違うのは覇気に動じることなかった私に興味を持ったことくらいだろうか。
たぶん、この世界の存在じゃないから、覇気が効かないんだろうなあ、とおもう。
その割にこっちの術は効いたりするから若干よくわからないんですけれど。
赤髪さんに品定めされるようにじろじろみられるのは大変居心地が悪い。
それを察してくれたかのようにサッチ隊長が目の前に立ちはだかってくれたけれど。
やんややんや、話し合いが終わって結局宴がスタート。
もう本当に海賊のアルコール好きは怖い。
そんなに飲めない私からすると恐怖でしかない。
だというのに、目の前に赤髪。
その横には彼の船の副船長。
私の横にはサッチ隊長にマルコ隊長。
後ろにはイゾウ隊長。
なんだか全力で包囲網を築かれている。
怖い。
いつから乗ってるんだ、とか
医者なのか、とか
根ほり葉ほり聞かれて、疲労度がハンパない。
助けて。
と、思いながら左右を見るが、楽しそうに私の話を聞いている。
「で、どっからきた?」
突然、本当に突然。
核心に迫る質問。
ゆるり、視線を向ければ、肉食獣のような瞳。
はぐらかすことは許さないと、そういうかのように。
「ここではない世界から。」
あきらめてあっさりと述べれば、一度だけ目が開かれて、そして楽しそうに笑われた。
「なんだそれ、おもしろいな。その世界のこと、教えてくれよ。」
今度は、まるで子供のように目をきらきらとさせながら赤髪はそう続けた。
思い起こす世界。
預言に縛られた、箱庭の世界
そこから逃げ出すことを選んだ彼は、劇薬を望み
それに立ち向かうことを選んだ彼は、自身を犠牲にした。
暖かくて、無防備で、優しくて、とても残酷な世界。
あなたを犠牲に手に入れた世界はどんなに色あせて見えたか。
預言を詠むことをやめたあの世界は、よる世をなくした迷子のように
指導者を亡くした集団は、個々を持つことができず。
一緒に旅をした仲間がいた。
「金色の髪のお姫様。民衆を常に見つめ続けた彼女は、気高く、たとえ血筋が違ったところで本当のお姫様だった。」
「復習を胸に抱いていた従者は、その相手である主に解されて、いつしか主従を越えて親友になった。」
「兄を止めるために外へと足を踏み出した彼女は、愛しい幼子の道標となり、その言葉で、術で、様々な人を救った。」
「導師、と呼ばれた指導者は、自分のあり方に疑問を持って、世界の変革を望み、なし終えた。」
「彼に使えた守護役は両親を人質に取られて、皆をだます行いをした。けれどもそれは彼女の世界を変えるきっかけでもあって。」
「はじめは敵対する立場だった緑の少年。彼は私を守る存在になってくれて。私の手をいつだって引いてくれた。」
「蒼を身にまとい、金色の王に忠誠を誓い続けた軍人は、その身に背負う業故に、常に苦しんでいた。」
「居場所をとられた紅は、すべてを信じるのをやめて、ただ、そこにあった。そして、選択を強いられた。」
「紅の髪をもつ、幼子は、生涯消えぬ罪を犯した。それの贖罪とばかりに、自分をいつだってないがしろにしていて。」
簡単に浮かぶ、あの子の困ったような笑み。
ごめんなさい、と何度も繰り返される謝罪を。
最後の笑顔だって、簡単に___
「・・・私はその子を助けることができなかった。」
ぼろり、こぼれたのは滴。
大事なあの子を救えなかった衝撃。
大好きだった、大切だった、変えられると思っていた。
それは、全部独りよがりで。
「まもりたかったのに、さいごまで、いっしょにいたかったのに」
ねえ、君はどうやって消えてしまったの?
私を残して、彼らを残して。
にじむしかい、とまらないことば
あふれる感情は決壊をなくして。
ただただ、繰り返されるだけの言葉の羅列。
ごめんなさい、ごめんなさい
よぎる後悔、消える衝撃
愛し子よ、幼子よ、
「っ、ルークっ・・・」
名前を呼んでも、返事は、ない。
「ごめんっ、ルークッ・・・!」
幼きあの子を、私は守りきれなかった。
ふんわりと、蒼い色に包まれる。
熱くはない、再生の炎
なだめるように、落ち着かせるように。
「もういいよい。」
優しい声。
穏やかな言葉。
イオンが、私を慰めるみたいに。
「思い出させてごめんな。」
サッチ隊長がぽんぽん、と背中をなでてくれる。
器用なようで不器用な、それはまるで、ガイみたいに。
「よく頑張ったな」
イゾウ隊長の穏やかに告げる、声。
すべてを受け入れて許すようなそれは、まるでティアみたいに。
共に旅をした仲間たちではないけれど、それでもここは、暖かい、
戦うことができない私を守り、慈しんでくれた彼らじゃないけれど、それでも彼らは、優しくて。
青い色
愛しい、あの人の色。
穏やかで、それでいて鋭いあの人。
「じぇいど、さん」
緩やかにそれをなでて、小さな声で名前を呼んだ。
目の前の赤い髪。
ルークたちのそれよりも少しくすんで見える色。
それでも、紅は私の心を全力で揺さぶる。
ごろり、落ちていく意識。
常にはない衝動は、お酒のにおいのせい。
暗闇に濁る赤色に、願うように手を伸ばす。
「ルーク、つぎは、絶対に・・・」
その言葉をいいおえる頃には、私の意識はふわりと沈んでいた。
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「絶対に、降りません。」
マリンフォードでの戦いは類をみないほど激しいものになる。
だからこそ、白髭海賊団では非戦闘員を領地である島におろしていた。
もちろん、私にも白羽の矢が立つわけで。
かといってそれに従うつもりもないわけで。
戦えないだろう。
その言葉は確か。
けれども、今の私には生かす力がある。
簡単に降りてなどやるつもりはない。
決してうなずかない私に苛立ちを隠さないのはマルコ隊長。
それをなだめるのはサッチ隊長で。
「」
再度、念を押すように呼ばれた名前。
だから、私は従うつもりは、ない。
「確かに私は戦えません。それでも、身を守るすべは、心得ています。」
だからどうかつれていって。
決戦の場所に。
「あきらめろって、マルコ。」
くつくつと笑うのはイゾウ隊長。
仕方がないと彼は続ける。
「俺たちの妹だ。聞き分けがいいわけないだろう?」
妹
その単語に柄にもなくじわり、頬が赤くなった。
ちゃんと、言葉にして告げられたのは初めてで。
妹だと、認められた気がした。
「・・・マルコお兄ちゃん、一緒につれていって。」
無理かな、と思いながらそっと問いかけてみれば、ぐっとマルコ隊長が身じろいだのがわかった。
「・・・わかったよい、無理はするんじゃねえぞ・・・。」
・・・想像以上にチョロかった。
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海賊たちの叫び声が響く。
どなるような、がなるようなそれに、思わず体がふるえて。
それをなだめるように、サッチ隊長が横にいてくれた。
「おまえは自分をとりあえず守れ。」
その言葉にうなずいて、前をしっかりと見据える。
エース隊長がいる処刑台はずっと先。
それでも、目に見える場所。
私の、手が、届く場所。
息を吸って、はいて、深呼吸。
ぎゅう、と手を握りしめて、なにもないのは不安だからともらった短剣が腰にあるのを確認して。
「癒しの光よ、聖なる加護を、キュア」
とりあえず、見える範囲にいるエース隊長に、回復の術を。
「聖なる力よ、彼のものを阻むすべてから守り通せ、バリアー」
親父様に、自分に、守るための術を。
私にできるせいいっぱいを。
戦場を駆け抜けることができるほど、私は強くはない。
わかってはいるけれど、それでも体が、急く。
「っ、」
いつの間にか後ろにきていたクロコダイル。
私に向かうそれは、自身にかけた術によって相殺されたけれど、二回目は止められないわけで。
「白髭のおっさん!!」
けれども、それは気がついたときには一人の少年、否、ルフィによって止められていて。
「エースの弟!!」
「やるよい」
響く歓声。
湧く戦場。
目の前に、確かに彼が、そこにいて。
傷だらけの体。
それでも前に進もうとする強い意志。
そして、エース隊長そっくりの、瞳。
「おまえ、大丈夫か?」
のぞき込まれた瞳が余りにもきれいで息をのむ。
「る、ふぃ」
小さな声でつぶやいたというのに、彼はなんだ、と首を傾げてくれて。
「聖なる、加護よ、慈しみ、愛しみ、癒しという名の、希望をこの手に、 キュア」
今私が持ちうる最大級の癒しの力を、あなたに。
「おお?なんか、痛くなくなった?ま、いっか!ありがとな!」
笑顔が、かぶる。
あの世界の人たちのと、エース隊長のと、
「お願い、エース隊長を、エースを、助けてっ!!」
「まかせろっ!」
ルフィはそう叫んで、笑った。
親父様に向かったスクアードさんの刃は、私の力によって止めることができた。
けれど戦いは激しくなっていって。
攻撃の術を使えないことが、こんなに苦しいとは思わなかった。
だって、できるのは回復と補助だけ。
てきをけちらすことなんて、できない。
傷つき倒れていく仲間たちをこの場所から援護することしか、できない。
「、一緒にこい!」
ぐ、と体を持ち上げられて、気がつけば親父様の肩の上。
高くなった目線に、驚きながらもしがみついて。
「このまま進む。危なくなったら逃げろよ?」
むかうのは、エース隊長、あなたの場所。
「な、んで・・・?」
ルフィの覇王色の覇気。
それによって、エースの左右の海兵は倒れるはず、だったのに。
片方は倒れたというのに、もう片方の人物はなぜか倒れ伏すことはなく。
ゆるり、手にしていた武器を、回した。
「っ、エース!!!」
皆の悲鳴が響く中、その男は気にした様子も見せない。
しかしながら、その武器が切ったのは、エースの、首では、なくて。
がしゃん、小さな音を立てて落ちたのは、彼の手にはまっていたはずの、錠
突然自由になったエース隊長は驚いたように後ろを見て。
「おのれ、裏切るのかっ!?」
響くセンゴクの声。
込められる怒り。
だというのに、その男はなんら気にする様子も見せず。
「ほら、さっさといきなさい。」
驚きで動かないままのエース隊長に男は声をかけて、先を促す。
同時に、ルフィがエースの元に到達して。
「エースー!!!」
「ルフィ!!」
弟が、兄が、再会を確かめるように抱きしめあった。
「逃がすか!!」
センゴクの叫びに、兄弟が身構える。
けれどもその前に、先ほどの男が立ちふさがって。
「ほら、さっさといってください。そこにいられると邪魔です。」
まさか
ありえない、
そんなこと、
その仕草も、声も、背格好も、知っている人に似すぎている、なんて
どくり、心臓が音を立てる。
「本当は、助ける義理も何もないんですがね。」
ため息。
それは、ずっとずっと聞きなれていたものに、にすぎていて。
「まったく。仲間を全部助けようとする癖、いい加減にどうにかしてほしいものです。」
まさか、だって、ここは、違う世界。
あなたが、存在するはずのない、世界。
ゆるり、向けられた、瞳の色。
宝石のように、きれいな、紅の色
あなたの、色。
格好は、海軍のものだったけれど、その肩にかかる、中将の印。
「ど、して・・・?」
私の言葉に、彼は、ジェイドさんは、いつものようにきれいにほほえんだ。
「私をおいて、どこに行こうというのですか、」
その瞬間、体が勝手に動き出していた。
「裏切るのか!ジェイド!」
親父様の肩から降りて走り出す。
その瞬間再度響いたセンゴクの言葉。
ジェイドさんは、笑う。
「裏切るもなにも、私が忠誠を誓うのはたった一人だけ。」
そう、この人が忠誠を抱くのはたった一人、金色の王様。蒼い国を治める尊いあのお人だけ。
走る、走る、他の人なんて、目に入らない。
向かってくる攻撃を、避けて。
誰かが相殺してくれて。
そして、ただ、手を伸ばす。
「自分の意志で守りたいと思うのは、彼女だけなんですよ。」
ばさり、脱がれた海兵の制服の下から現れるのは、彼が忠誠を誓う王様の国の色。
ふわり、処刑台から降りてくる彼に手を、のばして、ただただ、すがりついた。
「ジェイド、さんっ!!」
「まったく。あなたは放っておくとどこまでも行ってしまう。」
ぺたぺたと体をなでる手。
無事を確認する仕草。
厳しい口調の中に混じる優しい色。
全部全部、本当の、ジェイドさんで。
「!」
マルコ隊長の声が響く。
同時に向かいくる攻撃を認識して。
「天光満つる所我はあり 」
ふわり、あたりに広がる詠唱の陣
「黄泉の門開く所汝あり」
私は、知ってる。
この場所は安全だって。
「出でよ、神の雷」
私を守ってくれる場所、だって。
「インディグネイション!!」
光輝いた世界が一瞬で静まる。
その世界にたっているのはほとんどが海賊で。
ただ、呆然と立ちすくんでいて。
「セ、ト・・・?」
驚きの声を上げるサッチ隊長に笑ってみせる。
そうすれば、一つの瞬きの後、困ったように彼は笑って。
「「すげえ!!」」
まだ近くにいたエース隊長とルフィが、目をきらきらさせて走りよってきた。
二人の頭を一度ずつなでて、そうして、早く行きなさいと送り出す。
「・・・。」
ふわり、蒼をまとって降り立った隊長に一歩、足を踏み出そうとした。が、なぜかそれは止まる。
マルコ隊長がちらり、視線を向けたままに後ろを見れば、そこには満面の笑みのジェイドさん。
「本当にあなたは放っておくといけませんね。」
ぐっ、とおなかに回された手が、距離をつめられた。
「・・・、泣かされたらいつでも呼べよい。大事な妹のピンチならすぐに飛んでってやるからよい。」
そっと、柔らかな蒼が頬に触れる。
不思議な手触りのそれが、私を癒す。
「ありがとう、お兄ちゃん。」
そう返せば照れたように隊長は笑って。
「それがのいいひと、かい?」
イゾウ隊長にうなずいて見せれば、にやり、楽しそうに彼は笑う。
「大事な妹を泣かせたら容赦しないよ。」
その言葉にジェイドさんはただ笑うだけ。
「・・・いつでも帰ってこい。」
満身創痍の親父様が確かに発した言葉に、思わず瞳が熱くなって、とっさに頭を下げる。
ぼたぼたとあふれ出す滴に、視界がゆがむ。
ああ、もう、本当に私は優しい人に囲まれている。
あの世界で変えられなかった未来。
でも、今、確かに世界は変わった。
私にもできることが、ちゃんとあった。
「帰りますよ、。」
愛しい人の声。
ゆっくりと顔を上げれば、穏やかな表情。
落ちていた涙を拭って、彼に笑って見せて。
ジェイドさんの手をつかんで、踏み出すのはあの世界への道。
ジェイドさんがどうやってここにきたのか、どうやって帰るのか。
わからないけれど、彼ならば大丈夫だという謎の自身もあって。
親父様たちも、早々に離脱するようで。
エース隊長やルフィも船に放り込まれていて。
今頃残っている船医に治療されてることだろう。
ジェイドさんに、ひょい、と掲げ上げられて、彼は詠唱を始める。
あわてて自分も詠唱を口に乗せる。
この世界での大事な家族に、愛しい人たちに。
守り切れた優しい人たちが、この先も元気で生きていけますように。
「ハートレスサークル!!」
最後にみんなを回復して、わらってみせた。
※※※※※
TOAの連載のBADENDの後の物語。
ただし、本編ではBADEND各予定なし。
ただたんに救えなかったVERだと思ってもらったらよいかと。
エースをどうやったら自然に救えるかと試行錯誤中。
たぶん別世界の能力なので、奪われることはない。
キャパオーバーしちゃう。
なのでたぶんたちも悪魔の実は食べられない。
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