ドリーム小説






はまらないピース

















光が、走った。



その次の瞬間、目の前に現れたのは、幾度となく画面の向こうで焦がれたキャラクターたち。

彼らは私を見て、とてもとても安心したように笑って、そうして、「私」をしっかりと認識した瞬間、



信じられないというような、顔で、表情で、彼女をどこにやった、と叫んだ。













ゲームの世界の住人であったはずの彼ら。

彼らの世界に私はなぜか飛んでしまったらしかった。

そして、私の現れたその場所にはすぐ寸前まで、彼らにとって仲間と呼べる人物が存在していて。

その人物は、どうやら私と同じ世界の女の子だったらしい。




「私に、友達になりましょうって、そういってくれたんです。やさしい人、なんです。」


だって、あなたはずっと友と呼べる人を探していたのでしょう?


「気が付いたら、そばにいるのよ。何かと世話を焼いてくるんだから。・・・でも、いい子よ。」


だって、あなたはとてもとても不器用な人だったから


「僕が首領だって、なんども背中を押してくれたんだ!頑張れ、って、いつも頭を撫でてくれた。」


だって、私たちはあなたが作るギルドのその先を予想できたから。


「バウルに怖がることもなく、全力で愛してくれたわ。私を姉と慕ってくれた。」


だって、私たちはその正体を知っていたから。


「大好きなのじゃ!ぎゅうって、悲しくなったときは抱きしめてくれたのじゃ!!」


だって、あなたのさだめはあまりにも悲しすぎて。


「あんまり無理するなって、何度も怒ってくれたのよ〜。・・・何度も手を差し出してくれた」


だって、あなたの業を、あなたの存在している理由を、私たちは知ってしまっていたから。


「少しは頭を柔らかくしろと、何度も言われたな。でも、やればできるからって励ましてもくれた。」


だって、あなたの融通の利かなさは幼馴染と正反対のものだったもの。



「俺の、この手を、つかんでくれた。」



赤く染まったその手を、私だって、つかめたわ。






それらはどれだって、私にもできたことだったのに。



「ふふ、それ、何度かあの子が話してくれたわ。」


私が何かを話せば、それはすべて彼女につながって。


「ごめん、あいつならこれくらいの敵すぐ倒してたから。」


私の戦闘のできなささに、彼女との違いを見せつけられた気分になって。



彼女が、あの子が、あいつが。






私のすべての行動は、ただ、彼女が存在していない、そのことを知らしめるだけのように。






「あいつがいない世界って、いつもより色あせて見えるんだ。」






何度も、画面の向こう、焦がれた人物は、漆黒の髪を風になびかせて、泣きそうに、笑った。







訪れた、その異世界は、すでに私ではない人が、存在していて。

彼らのなか、空いた隙間に入ろうとも、それはいびつなパズルのピースのように、かちりとはまりきることはなく。

私の存在は、彼らに違和感を与えるものにしかなれなくて。




私を、この世界で私としてみてくれる人は、存在していなくて。









「レイヴンさん。・・・あー、違いますね。___シュヴァーンさん」


ふにゃり、気が抜けた雰囲気が、一瞬で硬く、研ぎ澄まされたものに変わる。

目線が、ただ鋭く私を射抜いて。


「何のつもりだ。」


低い低い、その声は、このパーティの中でほとんど出したことのないであろう音。



「私を、あの人のところに、連れて行ってくださいませんか?」










私を見てただ悲しげに瞳を揺らすあの人なんて

私を見て落胆で言葉を濁す彼女たちなんて



私を、見てくれない人たちなんて





この世界もろとも、消えちゃえ。





















そんな力もないから、私は彼女が望んだ平和を、私という異分子で捻じ曲げてやる。


あの人にとっても、私はきっとただの道具だろうけど。

























※※※※
たどり着いた先、そこにはもうすでに彼らにとって仲間がいてしまった、ただそれだけのお話。



ヴェスペリアはただただやるせない夢が書きたくなります。
そして名前変換一回も使用していないっていうね。









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