ドリーム小説















わたしには、好きな人が居る。




「やまけんくん。ここの公式なんだけど___」

「ああ、ここか。ここは___」


後ろの席、二人の人物の何気ない会話。
年頃の男女にしてはなんの盛り上がりも色気もない、淡々とした会話。


「ああ、そうか。ありがとう、やまけんくん。」

「・・・どういたしまして、水谷さん。」


それでも、わたしはそんな彼に焦がれている。


別にその低く、少し掠れた声でわたしの名前を呼んでほしいわけではない。

別にその切れ目の鋭い瞳でわたしのことを映してほしいわけではない。

別にその手で彼女に触れるように頭を撫でてほしいわけではない。



そりゃあまあ、そんなことをしてもらえたら嬉しくて仕方がないのは事実ではあるのだけれど。



「雫!!」

「ハル。」

「じゃあ、水谷さん。」

「うん。ありがとうやまけんくん。」




淡々としたやりとり。

でも、知ってる。

あなたのその瞳がとらえているのは彼女一人だと言うことに。

他の人に質問されてもあなたはそんな風に教えはしない。

彼女が受けるからと講習を受けるようになったあなた。



それはとてもとてもわかりやすい変化。



それが私にとっていいものなのかどうか。

それはわからないままだけれども。








どうやら何か状況が変化したらしい。

新学期が始まってすぐ。

彼女がひどくおそれるようにあの人と話すようになったから。

それでも、

彼女をみる


その瞳はひどく優しくて優しくて





愛しげで





ああ、どうしよう。




「やまけんくん。」

「・・・なんだ。」




わたしはそれでも




「わたし、そんな風に彼女に振り回される不憫なあなたがとても好きよ。」







ああ、ほら、そんな顔しないで。

もっともっと好きになってしまうから。


















※※※※※※

不憫なやまけんが愛しくて仕方がないです。







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