ドリーム小説










優しさの理由






私にはわからなかった。



突然放り出された世界で、

初めて出会ったはずのあなたが、

あんなにも私に優しかった、


その理由が。


金色の髪を揺らす少年が私を拾い上げてくれて

褐色の肌の青年が手を引いてくれて

桃色の服少女が私のそばにいてくれて

そんな彼女らの誰よりも、その人は優しかった。

紫色の瞳のあなたは、いつだって私を背中にかばってくれた。



どうして、そう尋ねる度に、あなたは困ったように笑って理由を教えてはくれなかった。

「僕はいつだって助けられていたから」

あなたが不寝ずの番をしているとき、火のそばで小さくなる私に触れて小さくつぶやいた言葉の意味も、わからないまま



そう、わからないままの、はずだったのに。


エルレインの見せる夢の中。

なぜか、私一人夢を見ることはなく。

リアラと一緒に皆を起こしにまわった夢の中。


そんな彼の夢の中に、私は、いたんだ。

敵対する彼と、かつての彼の仲間たち。

その仲間の中に私の姿。

必死に叫んだ私に、彼はいつもみたいに困ったように笑っていて。




ゆっくりと、濁流に飲み込まれていく彼の名を、私はずっと叫び続けて___




気づけば、そこは知らない世界だった。



否、知らない訳じゃない。

この王城も、屋敷も、記憶にはある。

今みているものよりもずっと寂れた状態で、だけれども。


ああ、もしかして、もしかして

どきどきと胸が音を立てる。

そんなはずはない、そんなことが起こるはずはない。

そう思いながら、気づいていながら、否定しきれない私がいて。


「おまえは誰だ」

ちゃきり、耳元で鳴る刃の音。

無理に押し殺したような低い声。

ゆっくりと顔を上げたその先に____



大好きな、彼の姿。



あふれる歓喜。

濁流のようにあふれてくる感情に、頬を伝う涙は熱く。


私を助けてくれたこの人を、

たくさん優しくしてくれたこの人を


まだ、なにも知らない、私と出会ってもいないこの人を



今度は、私が守る番。


とつぜん泣き出した私を彼は困ったようにしながら保護してくれた。

冷たいと見せかけて冷酷になれない優しい彼は。


「どんなにあなたが私をうっとうしいと言ったとこで、それでも、あの世界であなたは私のそばにあってくれたから。」

どうして僕にかまう。
その問いかけに返せるのはそんな言葉だけ

「未来の私は、きっとあなたを知らないけれど。」

私の言葉に、あなたは怪訝そうな顔。

でも、そんな顔だって、愛しいの。

「それでも、私はあなたが大好き」

赤く染まる頬も、困ったようにひそめられる眉も。
その仕草一つ一つどれをとっても

「私があなたに向ける想いは、幾日も積み重ねた時間の軌跡」

あなたが私にくれた想いを全部返すくらいの勢いで

「あなたが私に優しくしてくれたから、今の私はここにあるの」




私はあなたとともにありたいの




※※
1の世界で濁流に流されるリオンのところに飛び込んで、次に目が覚めたら2の世界の続き。

ぐるぐるぐるぐる輪廻するお話





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