ドリーム小説
砂糖たっぷりの生クリーム。
真っ赤に輝く深紅色の苺。
甘い甘い、ありったけの愛を込めれるだけ込めて、出来上がったはケーキの王様ショートケーキ。
見るだけで食欲をそそられて、期待とともに口に入れれば頬が緩む。
・・・はずの、それ。
「・・・ぅぇええ・・・。」
出来上がったそれは、スポンジが萎み、くたびれていて。
乗っけられた苺も切り口がぼろぼろ。
本来ならば生クリームがカバーするはずのそれらも、分量ミスのため残念ながらマイナスにしかなってなくて。
いくらみてもお世辞にも美味しそう、とは思えない。
「もう、無理だし・・・」
作り上げたケーキを前にじわり、視界が滲む。
甘い物好きなあの人のために、と頑張ったそれは残念ながら散々な結果に。
これならばあの人が作ったほうが確実に美味しそうだ。
「・・・というか、パーティーメンバーが無駄に女子力が高すぎるんだよぅ」
じわり、潤む視界。
理不尽な矛先はパーティーメンバーへと向けられる。このパーティーメンバー、はっきり言って料理が上手い。
とくに男子。
おかしい、おかしすぎる。
戦闘でもあまり役に立てない自分だからそれ以外はせめて・・・!そう努力すれど実る気配は見えず。
「こんなん、食べてもらえないし・・・」
決壊寸前の涙を必死で堪えて目の前のケーキをどうしようかと考える。
と、
コンコン、
キッチンに響く小さなノック音。
驚いてそちらを見れば綺麗な黒髪。
ドアに寄り掛かりながら、ドアを叩いたポーズで止まる姿。
すでにその体は室内に入り込み、どうやらノック音は気付かせるためだけに叩いたもののようで。
「何してんだ?」
じわり、低く響く声が耳にとどくまで、思考回路はショート。
はっ、と気が付いて、ケーキを隠すために慌てて動きだしたものだからはたり、瞳から雫が落ちて。
「っ、な、なんでもないっ!!」
微かに見開かれた瞳。
驚きか、衝撃か、それを認識できるほど今の自分は平常でなくて。
いびつなケーキをあわてて後ろに隠す。
触れる際に手がじわり、冷たさを感じた。
どうやらケーキに触ってしまったようでただでさえ不恰好が、さらに悪化している。
もともとあげること、を早々に諦めてはいたがそれでもさらに気分は落ち込んで。
驚きで止まっていたはずの涙が、また、じわり、沸き上がる。
コツン
小さく響いた音に顔を上げれば、何時の間に来たのか、目の前に彼の姿。
ゆるり、のばされた綺麗な指が、優しく目元に触れる。
その拍子に再び零れた雫。
その後をなぞるように指が滑る。
「何があった?」
柔らかく、宥めるように声が響いて。
「な、んでもない」
泣かれたのを見られてるという時点でもう無駄だろうに、口は勝手に動いて。
形のいい眉がひそめられる。
それすら綺麗とかどういうことだし。
目の前のことを放棄するように思考が飛ぶ。
「っ、」
頬にあった手が、ゆるり、離されて。
それがそのまま手に伸ばされて。
先程まで調理のために使っていた水のせいで冷やされた手がじわり、彼のものに包まれる。
そのまま手が引かれて、
「っ、ちょっ、ユーリっ?!」
ぱくり
そんな効果音と共に右手が生ぬるい何かに包まれる。
何か、とは言っているがそれの正体は理解していて。
だが、思考が認識を拒否。
ぬるり
生ぬるいそれがゆっくりと右手の指を撫でる。
ちらり、上目遣いのユーリの瞳にぞくり、背中が凍る。
ちゅ、と小さな音を残して指はユーリの口からはなされて。
「っう、あ・・・!」
衝撃でまともな言葉がはっせない。
ぱくぱくと金魚みたいに口を開閉して、ユーリを見れば、そこにはひどく楽しそうな笑み。
「甘え。」
くつり、喉で笑って、すっ、とその艶やかな瞳に射止められる。
「ジュディスから聞いた。ケーキの作り方を聞かれたってな。さて、誰に作るつもりだったんだ?」
答えはわかっているだろうに、疑問文。
私の顔が赤いのも理解してるだろうに、答えを促す。
「こんな、いびつ、なの、・・・ユーリに食べてもらえない、よ・・・」
じわり、再びにじんだ涙はこんどはぬるりとした何かに拭われて。
「っ、」
「って本当バカな。」
ゆっくり離れていくユーリの顔。
先程よりもずっとずっと、やわらかな笑み。
あまりにもきれいなそれに息を呑む。
「お前が俺のために作ったんだったら、何でも食べてやるよ。」
今日一番赤く染まってるであろう顔を下を向くことで隠して、緩む頬を手のひらで押さえた。
※※※※※※※
只のユーリエローウェン
ほんまは
「ユーリ、まずい、から、食べないでっ・・・!!」
ぼろぼろのケーキを口に運ぶユーリを必死で止めていれば、ぴたり、ユーリの動きが止まる
突然のそれにどうしたのかとユーリを覗き込めばじっと考える姿。
そしてその視線が私に移って、にやり、とても楽しそうに笑って口を開いた。
「そうだな、こんなまずいのもう食べれないかなぁ」
自分で言っておきながらさすがにそう言われてショックを受けた。が、
「あ、でも・・・」
ぐっ、と手を引かれてユーリの前に回される。
「お前にデコレーションしたら食べれるよな」
とか考えてたけど収集がつかないからやめた\(^O^)/
友人に捧げた物でした。
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