団蔵



「先輩!」

その声が聞こえた瞬間体は勝手に動き出して。

「ちょ、まってくださいよ!」

いつもいつも、

どうしてこの後輩は。

ちらり、後ろを見れば必死に追いかけてくる水色。

はあ、とため息。

この間仕掛けた罠はどこだったかな。

そちらにうまいこと誘導しよう。

追いつかれない速度で。

でも見失われない速さで。

いつもそう。

この後輩は、どんなに罠にかかっても。

どんなに逃げても

何時だって何処でだって追いかけてくる。

どんな理不尽な目に遭ったって

どんな怖い目に遭ったって

この子が入学した時にたまたま偶然に珍しく自分で起こした気まぐれ。

一年生を助けるなんてこと、しかも忍たまなのに。

そんなことをしたらなつかれてしまって。

もう、まったく。

次の角を曲がれば昨日仕掛けた罠がある。

再び後ろを見て、つきんとした胸を殺す。

なあ、お前。

頼むから。




(はやく自分に飽いてはくれないか?)