伝七
女の子はいずれ男の子には勝てなくなっちゃうのよ。
だからこそ、精神にうえつけなくちゃ。
私たちには勝つことができないってね。
今のうちに私たちの方が強いと思わせなくちゃ
入学してすぐ、先輩方に言われた言葉。
それは何の実感もないままの言葉であったけれど、いまではもう嫌というほどわかっている。
街でささやかれるかどわかされた女性の話を聞くたびに、私たち女の子という存在は男の子には勝つことができないのだとわかってしまう。
悲しいことに理解してしまったの。
だから、ごめんなさい。
私はあなたが嫌いだとかそう言う感情を持っているわけではないけれど、あなたのことを貶めなければいけないの。
私だけでなく後輩のためにも。
まだまだ何もわかってない後輩たちのためにも。
だからごめんなさい。
穴の底からきっと鋭い眼で睨まれる。
そのまなざしは嫌いじゃないけれど。
そのまなざしはひどく心にささる。
「あらあら、本当に懲りない人ねえ。また落ちてらっしゃる。」
「落としたのはあなたでしょう!!」
水色装束が汚れてる。
赤褐色の綺麗な髪も土によって汚れていて。
名前は・・・伝七といったかしら。
一年の優秀といわれるい組の子。
「こらだからくのいちって・・・」
投げつけるように言われた言葉。
つきり胸が痛む。
でも、それは知らないふり。
(これがくのいちなのよ。ゆだんしないで)