竹谷八左エ門


「っ、おわ!?」

さすがに、この年齢になってくるとこいつらも簡単には罠にかかってくれない。
まあ、それは仕方がないとわかっている。
だが、こいつはよくわからない。

常に罠にかかる一歩手前で回避する。

お前は動物か。

本能がどんなにすごいんだよ。

そう思うが残念ながらそれを口に出すつもりはない。

というより、面と向かって話す必要性も感じなければ、その可能性も見いだせない。

けれど、一度も私の罠にかかってくれないならば、

ぜひともかかってほしいものなのだ。

だから私は、こうやって彼に仕掛ける。

私がしていると知らないであろう彼は、常に罠にかかりそうになってきょろきょろと辺りを見回す。

そして誰もいないとわかったら恥ずかしそうにふにゃり笑う。


そんな顔見たくなどなかった。


変に記憶に焼き付いて。それはまったくもって私の心を揺らすのだから。


殺したはずの心が揺らぐのだ。


ああもう、早く一度でいいから罠にかかって。

そうしてくれれば私は、私はあなたから目を背けることができるのに




(きっかけ、がなければあなたから離れられなくて)