伊助


「あれ?伊助の手が少し赤いよ?」

壁の向こう。

くのいちと忍たまを分ける境界線で。

聞こえた言葉にぎくりとした。

「うん。昨日ちょっと布を染めてたんだ。」

その言葉に胸をなでおろして。

赤い、なんて怖いこと言わないでくれよ

そっと自分の手を見やる。

白く柔らかなその肌はところどころ傷があって。

その手は、いまは白いその手は、


夜になれば赤く染まる


自分の手ではないように


真っ赤に染まる。

紅のそれは、どんなに洗ったところで、色は落ちてもにおいは残り

紅のそれは、どんなに落ちても、罪は消えず。

まるで忘れることは許さないと、訴えかけるよう。

なあ、水色よ。

お前らはまだ白いその手のひらのままで。

その手に重い荷物を持たぬままで

できることなら、こんな世界知らないままでいてほしいものだ。

ここにいる以上不可能な願いはしかし、お前たちならば可能ではないかと思わせる。

お前ら一年は組なら



(不可能を、可能にする軌跡を見せてくれまいか)