金吾


泣き虫だなあ。

道場で先生に打ち負かされて、

あまりの痛さにだろう、涙目になる。

けれどもすぐ後には目元をぬぐいきっと視線を鋭くして再び先生に向かっていく。

本当に、甘いなあ。

だが、その姿勢は好ましくもある。

向かっていってはけちょんけちょんに負かされて

飛ばされては再びかかって行って。

幼きその姿勢には見習うところがある。

その姿は小さくとも、そのまなざしは激しく。

力は弱くとも、想いは強く。

だからこそ、あの先生もこの子を相手にするのだろう。

負ける悔しさを知っているこの子は同時に守る難しさも知っていて。


ああ、本当に泣き虫で

甘ちゃんで

そして心が強い子だ。




(そんな子が、いまはただ純粋に羨ましい)