孫治郎
見つけた!
そんな声が聞こえてきた。
ふらり目をそちらにさまよわせれば水色。
その彼の行く先には赤い毒々しいまでのちょうちょう。
それに嬉しげに近寄ってくあの子は生物委員だろうか。
虫取り網を持って追いかけまわす。
あまり慌ててはこけるぞ。
そう思いながらも自分は傍観。
案の定
おろそかになった足元。
石に躓いてへちょり、こけた。
それがあまりにも想像道理で笑えた。
うう、と微かにうめいて、でも慌てて立ち上がった水色はきっ、と、ちょうちょうを睨む。
それはお前の不注意だというのに。
だが、そんな様は子供らしくほほえましい。
再び握り締めた虫取り網を構えてちょうちょうを再び追い出す。
あまりにも捕まらないそれにしびれを切らしそうになったそのこの前に
ひらり
とんでいたちょうちょうを捕まえ渡してやる。
え、という乾いた声を無視してそのかごに入れてやれば
慌ててぺちょんと下がる頭。
ありがとうございます!
そう告げられたそれにぽわり心が温かくなった。
(私も人だから、礼を言われると嬉しいのだよ。)