田村三木エ門
どん
強く肩を押されて後ろによろめく。
彼の赤い瞳に浮かぶは怒情。
ぐっと食いしばられた唇がわなわなとふるえる。
せっかくの綺麗な顔が台無しよ、と言いたいけれど、その顔さえも美しく。
ああ、アイドル学園という名前の由来はここにあるのだなと思わせて。
「なんなのですか、あなたは。」
怒りを必死に抑えているがそれは完ぺきではない。
彼の眼に映る私は無表情で。
ああなんて可愛くない顔。
彼が起こる理由もとてもよくわかっているから。
だからこそ、つきんと痛んだ胸から目を背ける。
「いきなり言いよってきて、問答無用とばかりに甘味を渡して。」
そう、くのいち教室の実習。
作ったものを忍たまたちに渡しなさい。
「確かに僕がしっかりと管理していなかったことも原因です。」
「けれども、あんなものを入れたものを平気で渡せる感性を僕は信じられません。」
毒を入れて
本当はそんなものわたしたいはずがないじゃない
本当は心からの思いを込めた甘い甘いお菓子を渡したいわ
あなたに届けと想いをこめて、心からの笑顔と共に
でも、そんなこと許されるわけないじゃないの
私がわたした毒入りのお菓子は彼の委員会の後輩が食べてしまったらしい。
それのせいでその子は今寝込んでいるのだとか。
「安心して、死ぬようなものじゃない。二日間くらい寝込むだけだから」
口をついた言葉はより一層彼を怒らせるだけだと知っていたけれど
一層怒りを色濃く映し出した表情。
でも、ただそれだけで。
何も言わず背を向けて去っていくあなたはあまりにも遠かった。
(いっそののしって嫌いと叫んでくれた方がどんなに楽か)