左近


傷。

その一言しか述べない彼。

ただ、言葉が足りないだけ。

別に不快に思うとかそんなのはない。

むしろ最低限のかかわりで済ませようとする様子は、こちらにとってもありがたい。

くのいちにとってこの場所は、医務室は何処となく居心地が悪いのだ。

やはりくのいちよりも忍たまのほうが人数が多いからか、この場所にいるのはお世話になるのは忍たまたちの方が多い

故意に出会うことを避ける傾向にあるくのたまたちにとってこの場所は鬼門なのだ。

それは私にも当てはまることだから、最低限の言葉しか交わさない。

だが、残念なことに私はよく体に傷を追ってしまう。

それは弱いからというよりも前線に立つことが多いからだろう。

そしてそのたびこの青色にお世話になっている。

そして常にこの会話。

慣れた今では心地よく思ってしまうものだ。

「あまり来ないでください。」

おや、珍しく話が続いたと思ったらそんな言葉

「傷薬がもったいないでしょう。」

その言葉の裏に隠された真意に笑いそうになる。


「仮にも女の方なのですから、傷を残さない努力はしてください。」



だが、その言葉は禁句だよ、君。


私の体に残る傷はないとは言えない。

くのいちとなる私はこの体でさえも道具になるのだから。

傷などあってはいけないのだ。

だがね、それと同時に傷を貸すすすべも知っているのだ。




(傷を残さない努力などできない、生き残るための努力で毎日精一杯だからね)