神崎左門
「お!迷子か?」
うわあ、やな先輩に会ってしまった。
実習が終わったのはいいけれど、足をくじいてしまい動けなかった。
そんな時にがさりがさり現れたのは一つ上の黄緑色。
それも札付き迷子さん。
あなたに迷子かと聞かれたとこで、答えたくない。
「ええ、と」
「安心しろ!私もだ!」
安心できる要素が何処に?
にかりにかり眩しいほどの笑みは、向日葵さんみたい。
一緒に行こう!
その言葉はまるで魔法の言葉みたい。
どくん
無意識に伸ばしかけた手を慌てて引っ込める。
だめ
だめ
だめ
弱いところをみせちゃだめ
ぐっと強く手のひらを握って先輩を見上げた。
「大丈夫ですので、先輩はどうぞお先に。」
それに首をかしげた先輩にもう一度言葉を発する。
「これからクラスメイトとここで会うのです。ですのでさっさとーー」
ざあ、と風が吹いたと思ったら目の前には桃色。
「全く何してるのよ。ほらさっさと帰るわよ。」
クラスメイトで同室でもある彼女がいつの間にかそこにいて。
「神崎先輩。この子は私が連れて帰りますので失礼します。」
その言葉と同時に彼女に支えられて歩き出す。
「まったく、相変わらずどんくさいわねえ」
それに苦笑を返して。
(ありがとう、の一言でも言いたかったな。)