三治郎



「先輩。」

聡い子だと思う。

まっすぐにこちらを見てくるこの後輩を。

迷いのない瞳。

微かに浮かんだ笑みはこの年の子にしては大人びて。

風の噂で聞けば、この子は山伏として地方を転々としてきたと聞く。

そのせいか、思わぬことを知っていたり

聡い発言をすることが多々ある。

「先輩」

再び私を呼ぶ声でようやっと意識はそちらに向く。

まっすぐに射る瞳は鋭く

私を呼ぶ声は柔らかさを含んでいながらきつく。

「くのいち教室の皆がどのような心づもりかは知りません。」

ですが、

そういって一度言葉を切って。

そうして今までの笑みとは全く質の違うものを私に向けた。

それはいうなれば捕食者の笑み

数年下の子に、こんな表情を向けられるとは思いもしなかった。


「僕の大事な友人たちに手を出すことは許せません」


覚悟、しておいてくださいな


柔らかな口調とは裏腹に、真黒な闇がのぞく瞳。


ああ、何がこの幼き子をこのようにしてしまったのかと自問して、そうして気づく。

私たちくのいちが原因だ、と、



(すまない、などと謝ったところで取り返しがつくはずもなく)