斎藤タカ丸
金色の髪が夕焼け色に反射して空に滲む。
ふにゃり猫みたいに瞳をすがませてきみはこっちをみた。
「うん。可愛くなった」
はたはたと手についた髪をはたきながら満足げにきみは笑う。
「まるでお姫様みたいだよ」
くのいちである私たちが唯一近づくことを許された人。
くのいちである私たちに唯一近づくことをためらわぬ人。
何度罠にかかろうと、何度罠に落ちようと
決して私たちに近づくことをやめない人
きっときみはわかっているんだ。
私たちの持つばかげた理由に。
きっときみは気づいているんだ。
近づけないこと、が私たちにとっての最大の防御であると。
きみはこの学園内で一番忍びとして未熟だけれど
君はこの学園内で一番世界を知っている。
ふにゃりふりゃり笑う笑み。
可愛いと評判のきみの笑みは
その可愛さとはうらはらに、私たちに想いを抱かせないように距離を見せいて。
興味があるのは髪だけと
そう言外に告げる。
(きみにはきょうみがないよ、と、言うのならば髪に、心に触れないで、)
(そんな優しさ、いらないよ)