食満留三郎  ※※※



嫌い嫌い大嫌い


その言葉が言えたらどんなに良かったか。
くのいちだから表面に心を出してはいけない。
私は女の忍びとしてこの世を生きて行くのだから余計に。
心を隠さなくてはいけない。

嫌い

好き

大嫌い

大好き


何一つ表に出してはいけない。

きっとだれも私の好きなものも嫌いなものも知らない。

同室の子にはばれてるかもしれないけれど、でもきっと後輩たちは知らない。

いつも笑ってにこにこしていて、先輩はいつも笑っていて素敵ですね、
その言葉は私にとっての賛美。
だってそう言われるようにしているのだから。


だからね、私の心をさらけ出そうとするあなたは大嫌い。


目つきが悪いくせに後輩たちには優しく微笑んだり
けんかっ早いくせに変なところで律義だったり。
女の子は優しく接さなくてはいけないだとか変な理論を解いたり。

嫌い嫌い大嫌い

私の心をかき乱すあなたなんて大嫌い。

「藍」

「なあに、用具委員長さん。」

だからこそ名前を呼ばれてもふわり笑って返事するの。


(私の想いがばれないように)