浦風藤内
「作法の良心」
以前あたしの幼馴染だった彼は今、そのように呼ばれているらしい。
綺麗どころの集まりとされる作法委員会はあたしたちくのいち教室の中でも話題に上がることが多い。
特に委員長の立花仙蔵なんかはくのいち教室の子たちが見本にすることも多かったりする。
といっても、親しき中になどなりはしないしなれはしないので高根の花として観賞用植物のように皆は彼らをめでる。
そしてその作法の中唯一の常識人らしい彼、浦風藤内。
学園に入ってからはほとんど見ないけれども彼が本来持つ美しさは年々前に出てきているように感じる。
さすが、作法委員とでもいうべきか。
美しさの中に強気心を秘めた彼は今もまだあの頃のままの優しさを持っているのだろう。
住む場所を離れてもう三年。
あたしがあの場所にいないのは嫁いでいったからだと思っているだろう。
きっと何も言えずに消えたあたしを薄情な奴だと怒っているに違いない。
けれども、彼も彼であたしに行き先を告げることなどなかったのだ。
あたしが告げることもなく、彼が告げることもなく、
そうしてあたしたち幼馴染は、幼馴染だった、という言葉で終わった。
あたしはそのあと学園内で彼を見つけて彼を知った。
その再開に幼きころの記憶が溢れ懐かしさでいっぱいになったけれど
あたしはくのいちで
彼は忍たま
相入れてはいけない
入学した当初から言われ続けたそれを覆すことなどできるはずもなく。
彼の噂を聞いて、元気にやっているようだということに安心する。
きっと彼はあたしがここにいることはしらないのだけれど。
(まだ、あなたは生きている。)