ドリーム小説
くるりくるり 3
黒髪に小さな背。
目立たない風貌の、普通の少女。
東洋人として、珍しい、そう注目を集めるはずなのに、誰の目にも留まらない不思議な子。
頭は良くも悪くもない。
特に親しい友人もいない。
今回の生で選んだのは傍観。
全てを、ただ、みるだけ。
たった一つのあのときを変えるために。
1年生、賢者の石を巡る騒動。
全てを知っていようと、全てをただほうっておいた。
2年生、秘密の部屋と石化事件
石になる生徒たちを横目に、私は自寮にこもり続けて
3年生、囚人に犯されたこの学校
たとえあれが正義だろうと悪だろうと、私には関係ないと
4年生、学校対抗のトーナメントもよみがえる例のあの人も
先輩が物言わぬ姿で帰ってくるのをただ眺めた。
5年生、私には何の影響もない一年。
ただ、彼らが苦しんだだけの年。
6年生、あの人が闇の魔術に対する防衛術の教鞭を執って。
あの魔法使いに手を下した。
最後の一年
あなたは、この学校の校長になり____
今、私の前で滅多に見せない驚きの表情を浮かべている。
その表情の意味は、よく理解できる。
授業中も目立たない、生徒が、こんな風に魔法を操るなんて。
まったくもって関わりを持たなかったハッフルパフの生徒が、
瀕死のあなたを生きながらえさせた。
「遅くなりました、スネイプ校長。」
「あなたを助けにきたものです。」
うやうやしくあなたの手を取って、深々と頭を下げてみせる。
叫びの屋敷。
座り込むあなたの前。
赤くただれた傷口を、さらり、杖で一なぞり。
そうすればあっと言う間に傷は治って、毒は浄化されて。
そう、ただこうすればよかったんだ。
ほかへ、なんにも手を出さず。
ただこの時を迎えるのを待って。
この人が死に絶える直前で、
今まで生きてきた生で手に入れた魔法を、技術を、最大限に利用して。
この人を生かす、その目的のために。
取った手を、ぱしり。
ふりほどかれる。
ああ、それこそあなたです。
思わず笑みがもれる。
どうしてもたどり着けなかったこの結末に、たどり着けた今このとき。
不信そうな顔も、
不機嫌そうな表情も、
私に向ける嫌悪も、
すべて、すべてがいとおしい
あなたが生きているのだと、示すのだもの。
再び手を取り、彼を立ち上がらせる。
傷ついた至る所を杖でなぞり、修復していく。
無言で行われるそれに、共学の表情を見せるあなたを。
ただ、愛しく思う
「いったい、なにが・・・」
ひきつった声。
あらあら、のども少し痛めているみたい。
そっと喉元に杖を向ければ、条件反射のようにふせがれて。
「スネイプ教授。私はあなたを生かすためだけに存在しているんです。」
私の言葉に固まるあなたにほほえんで、再度杖でのどをなぞる。
そうすれば柔らかな光が点り、傷がいえていく。
「ハッフルパフの___」
告げられた名前。
それは確かに私のもの。
名前を覚えてくれていたこと、それが私へのご褒美です。
「なぜ、生かした・・・!」
ぐ、っとネクタイを捕まれて、至近距離で見つめる表情。
生かしたことを、怒られること、予想はしていた。
だって、何度か助けられそうになったとき、この人は自ら死を選んだのだから。
だからといって、あなたが成してきたことを、守り続けてきた命が知らないままなんて、私が納得できないの。
世界がそれを知ったとき、あなたがかこのひとになっているなんて、なにがうれしいものですか。
でも、なによりも、私は、
「大好きなあなたへ、嫌がらせよ。」
どの生だって、決まって、私はハッフルパフ
どの生だって、決まって、あなたは死んでしまう。
どの生だって、あなたは決して私をみてはくれなかった。
そんなあなたの記憶に残りたかったから。
そんなあなたの世界に存在したかったから。
私を愛してくれなくていい
私を、忘れないでほしい
小さな小さな、私の願い
ねえ、これで私はあなたの記憶から離れられないでしょう?
「それより教授。」
そっと手をたたけば力つきたように手は、離れて。
「あなたの愛したあの瞳が、勝利を手にするところを___」
一緒に見に行きましょう?
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