ドリーム小説
「なんであの子がスリザリンなのかしら!」
聞こえよがしに、響く声。
どう聞いても、それらは好意的ではなく。
それを耳に入れながらも、聞こえないふりをして素通りする。
(そんなこと、私が一番思っている。)
胸元に抱えた教科書に、すがるように力を込めた。
この学び屋に来て、二年の月日が流れた。
本当であれば十歳で入学するこの場所に、私は三年遅れて入学して。
理由は魔法の力が開花するのが遅かったとか、なんとか。
日本人という外観からか、年齢については問われたことはないけれど。
彼女たちよりも幾分か、年上で。
気にしてはいけない、と言い聞かせる。
私は彼女たちより大人なんだから、と。
一年目は、ただただ、言葉を覚えるのに必死だった。
悪口なんて、気にしてる暇もなくて。
けれど、二年目にはいった今、意味が分かるようになったその言葉たちは鋭い棘をもっていたことに気がつく。
「東洋人の魔女だなんて」
「長い黒髪、うっとうしいわ」
「純血で気高いスリザリンに、ふさわしくない。」
「呪文学も、防衛術も、なあんにもできない。」
「一回だって成功したことないものね」
「「どうして、あの子は、スリザリンに選ばれたの??」」
入学してから何度だって聞いたその言葉たち。
きっと一番疑問に思っているのは、私。
未だに覚えている。
あの日、この学校に初めて足を踏み入れたあのとき。
きらきら輝く大広間。
全校生徒の前で座って、かぶらされた帽子。
その帽子が、告げた言葉。
「グリフィンドールに行けるほど勇猛果敢、とはいえない。
忍耐強く誠実、ともいいがたいハッフルパフでもない。
レイブンクローに所属できるほど学びの意欲が強くもない。
狡猾とは言い切れないが___スリザリン!」
すべての寮への資格を、そっと、でも確実に否定されて。
そうして消去法で選ばれた寮。
純血かどうかも定かではない、私を受け入れてくれるはずもなくて。
付いたあだ名はスリザリンの劣等生。
語学の壁に挟まれて、手に入れられるはずの知識を吸収しきることもできなくて。
何の授業でもよい点数をとれることもなく。
成功どころか失敗ばかりの毎日で。
どうして、この場所に来てしまったのか。
何度だってそう思う。
そして、思うたびに思い出す。
私を送り出す、笑顔の両親の姿。
行ってらっしゃい、気をつけて。
たくさん友達見つけてらっしゃい。
心優しい両親を、大切で仕方ない彼らの、最後の、姿。
私を送り出した後、両親に、わたしの知らない、何かが起こって。
そして、私の帰る場所は、なくなった。
親戚に引き取られはしたけれど、迷惑をかけるわけにもいかなくて。
だからこそ、この、学校が、私の居場所に、ならなきゃいけない、はず、なのに。
「スリザリンにふさわしくはないわ。」
いつだって、その言葉を向けられれば、心は、思考は、ただゆがんでいくばかりだった。
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