ドリーム小説























「スネイプ教授。」


通いなれた教授の部屋。

こんこん、と扉を開けてから所在を示す。

そうすればうんざりとした表情がこちらに向けられて。

「ノックはしましたよ、事後承諾ですけど。」

発せられる言葉を先回りして、にっこり、笑ってみせる。

そうすれば、変わらないため息。

それでも私の言葉が彼を揺らしているという事実に、ふわり、胸が暖かくなる。

「あのときの素直なお前はどこに行った・・・。」

「あら、今ここにいる私は素直そのものでしょう?」

遠い目をする教授に笑ってみせる。

足を進めて、教授の真後ろまで距離をつめる。


あの事件があってから、スリザリン生は皆、私を怖がるようになった。

彼らにとって意味の分からない言語で発せられる魔法は驚異いがいのなにものでもなくて。

実技でいろんなものを補った結果、成績は上位に躍り出た。

さらに年を重ねるごとに、蓄える語彙力も増えていくわけで。

全てをゆだねあえるような、そんな親友という存在はもてなかったけれど。

授業を一緒に受けれるような、ご飯を一緒に食べれるような、そんな友人は手に入れて。

私は一人ではなくなって。

何より、この優しくも不器用なこの人が、いつだって面倒をみてくれて。


「好きですよ、教授。」

するり、後ろから抱きつくように体重をかける。

教授はそれでも微動だにしない。

言い出したのは、三年生の時。

この人の部屋から、私の前に現れては消える紙の切れ端を見つけたとき。

この人が、愛しいと、そう感じた瞬間に。

距離をとられてもめげずに攻め続けて。

受け入れてもらえなくても何度だって言葉を伝えて。

逃げられてもいつだって追いかけて。

そうやって手に入れたこの場所。


色よい返事はもらえないままだけれど、ひっぺがされないことが、すべてを物語る。


「我輩は忙しい。」

「ええ、知っています。だから、邪魔はしていないでしょう?」

抱きついて、体重はかけているけれど、重くはないように。

手を回してはいるけれど、邪魔にはならないように。


だって、愛しいあなたの邪魔をしたくはないのだから


「・・・過去のお前が懐かしい。」

「今の私を愛おしんでくださいな。」

一言一言に丁寧に返して、そっとそばから離れる。

少しはあなたを補充できたから、後はおとなしく待っていよう。

「・・・本当に、お前はスリザリンに似合いの生徒だ。」

離れたばかりの手を引かれて、今度は正面から彼の腕の中に。

ぐ、っと腰を引かれて、抱きしめられる。


「それは最大級の褒め言葉ですね。」

腕をまわして、ぎゅう、と抱きしめる。


広がる薬草の香り。

愛おしい人のにおい。


「先生、好きです。」

もう一度、あなたの腕の中で告げる。


「我輩のこれからはお前のためにはない。」

くぐもった声。

耳元で響くあなたの音。

「それでも一緒にはいれるのでしょう?」

くつくつと笑う声。

仕方がないなとでもいうように、この人は笑う。


「卒業まであと三か月。それまで、返事は待て。」


それは、つまり、色よい返事を期待してもいいということかしら。



了承の代わりに、もう一度好きです、と口にのせた。






















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