ドリーム小説
覚えているのは、二つの金色。
鏡に映ったそれを認識するよりも早く、意識は落ちた。
「具合は。」
目を開けた先、黒いローブ。
薬学の匂い。
ぼおっとする頭は、言語を理解しない。
口元に差し出されたゴブレットの液体をうながされるまま、喉に流し込む。
そうすれば、認識できなかった言葉たちが色を持つ。
「すねいぷきょうじゅ」
動きにくい口を開けば、かすれた声がでて。
「秘密の部屋にはバジリスクがいた。」
一年間、騒がしかった秘密の部屋の話。
そこに潜んでいた怪物は人を石に変えてしまう化け物。
ゆっくりとあたりを見回せば、そこは医務室で。
机には色とりどりのお菓子やカードが並んでいて。
双子やセドリック。
それから仲のいい友人たちの名前があった。
そっとそれらに手を伸ばしてみるが、ぎしぎしと体が音を立てて。
「まだしばらく自由には動かないだろう。」
おとなしくしておけ
その言葉と同時に頭を撫でられて。
再び沈み込んでいく意識を柔らかく受け入れた。
「大丈夫だったの!?」
汽車でたどり着いたキングスクロス駅。
出迎えた両親が初めに抱きしめたのは、やっぱり妹だった。
石になった私を心配するでもなく、秘密の部屋へと連れ去れた妹を、慈しむように抱きしめて。
私だって、固まっていたんだよ。
妹よりも、ずっと長い間苦しかったんだよ。
でも、声は届かない。
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