ドリーム小説
ハロウィンにトロールが入り込んだ
その騒ぎの次の日、噂はあっさりと塗り替えられていた。
ハリーポッターが、その友人たちがトロールを倒した、と。
その中に混じっていたのは妹の名前。
朝食の席で、誇らしげに笑う妹を見たとき、体は勝手に動いていた。
「危ないことをしないで。」
お姉ちゃん、言葉と同時に笑顔。
眩しいそれに目を細めながら本来の目的である言葉を紡ぐ。
危険なことを、しないで。
私の言葉に妹はむ、と表情を暗いものに変えて。
「・・・怪我しなかったもん」
そうじゃ、ない。
「それでも、危険なことに変わりなかったでしょう?」
ふい、と目をそらされる。
いつだって、そう。
この子は私の話を聞きはしない。
「姉君は心配をしているんだ。」
「君を想ってくれているやさしいお姉ちゃんだろう?」
フレッドとジョージが言葉を紡ぐ。
その口から私の名前は、でない。
「あの!」
そっぽを向き続ける妹にため息をつけば横から呼ばれる。
見れば、栗色のふわふわとした髪をもつ女の子がこちらを見上げていて。
「私が悪いんです!」
ぎゅ、と眉をひそめて、妹をかばう言葉。
それはきっと嘘ではなのだろうけれど、半分くらいは本当じゃない。
「・・・お姉ちゃんには関係ないじゃん。」
ぼそり、小さな小さな声。
そうだね、私には何にも、関係ないね。
でもね、あなたが何かをしでかせば、私に連絡が来るの。
切っても切れない家族という立場から。
めったに手紙をくれない両親から、お叱りの手紙がくるの。
どうして妹をちゃんと見ていなかったのか、って。
危ないでしょう、って。
私のことは気にかけてくれないくせにね。
もう一度、ため息。
妹の瞳を見て再度、念を押す。
「お願いだから、危ないことをしないで。」
危ないから、危険だから、あなたが心配だから。
そんな理由じゃない。
私が何かを言われるのは嫌なのよ。
私に迷惑を、かけないで。
ゆるり、妹の横から離れる。
後ろの席で赤髪の弟が、何か悪態をついたけれど別にどうでもいいわ。
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