ドリーム小説
蒼の世界で生きる 強奪
白髭に用事があるといっても大したことではなくて。
ただいい酒が手にはいったからそれを手土産にでもして、久しぶりに顔を見ようかと、そう思っただけで。
あまり近づきすぎては海軍の網に引っかかってしまうからと。
一定の距離を保ちつつ存在を知らせる。
そうやって近づいていったとある島。
俺たちが船をつける前に出航していることは見越していたけれど、まさか家族を置き去りにするとは想像していなかった。
なさすぎる存在感を示すかすかな血のにおい。
それがなければ自分でも気がつかなかったであろうその存在。
ただぼおっと傷ついた体で海を眺めて。
ぼろぼろと音もなく涙を流していて。
放っておけばきっと、誰にも知られぬままその生を終えるのがわかって。
気がつけば声をかけていた。
倒れたその体は軽く、存在のなさに拍車をかける。
閉じられてもなおこぼれる滴を拭って。
船につれて帰れば呆れたようなベンの顔と楽しそうなヤソップたち。
まあ白髭のクルーだとは思ってもいなかったけれど。
だけどおいていかれたってことは、もう必要ない、そういうことだよな。
「白髭のところにいくんじゃなかったのか?」
が乗った記念と称して開いた宴。
酒の一杯ですぐにダウンした彼女を膝に乗せて酒を煽る。
そうしていれば呆れたような声色がベンから発せられて。
「そんなこと言ったか?」
へらり、笑って返せばベンのため息。
「が怒っても知らねえぞ。」
その言葉にゆるり、膝の上で寝息をたてる少女をみる。
「故意であれ事故であれ、置いていったってことはもう必要ないんだろう。ならわざわざあいつ等に返してやる必要性は感じねえな。」
存在感がないからと笑う少女。
それはつまりそこにいることを認識してもらえないと言うことで。
いないも同然で。
あの船は広い上に船員も多い。
こんな小さな体では埋もれてしまうだろう。
さらに言葉も不自由で聞き取ることも得意ではないとなればよけいに。
ならこの船にいればいい。
たった一人で死んでいくくらいならば俺たちに認識されて死ねばいい。
最後の最後に思い出すのが俺たちの顔であればそれはきっとおもしろい。
※※
私の中の赤髪さんあんまり性格いくないです。
こう、満面の笑み、くったくのなさ、壁を作らない、そうやって接するけれど、心の中ではめちゃくちゃ海賊らしい。
を乗せたのも優しさとかじゃなくて白髭への嫌がらせ。
彼女が持ってた荷物の中にあった贈り物たちをみてなんだかんだで大事にされてるって気づいてて。
そんな存在を忘れていった彼らをばかだなあ、って思ってて。
放っておけば一人で死ぬだろう存在を自分が助けて、船に乗せて。
守るつもりも彼女に何かあっても責任をとるつもりもない。
ただ、彼女が死ぬであろうと着に彼女が好きだったであろう白髭のクルーじゃなくて俺たちを思ってたらおもしろい、そう思っただけ。
戻る