ドリーム小説
蒼の世界で生きる 年月
白髭の船につれていってやる。
その言葉を信じてこの船に乗せてもらったのは私。
けれども半年以上もたった今でもその言葉は果たされることなく。
鞄の中には未だに本来の目的を見失ったままの贈り物。
時がたったせいかその包みは少々薄汚れて、くしゃりと形を変えていた。
この船に乗ったときに与えられた部屋は階段下の物置を整理しただけの簡単なもの。
それでも確かにその場所は私の部屋で。
この船の中で唯一の居場所だった。
朝早く起きて、昨日集めた洗濯物を洗う。
それを干してから食堂に向かって、船員たちの食事後のお皿を洗ったりコックの手伝いをして。
あまり料理をすると言う行為が得意ではなかったため本当に簡単なことしかできない。(この船に乗ったときは女なのにと呆れられた。)
そのため主に行うのは後かたづけ。
それから野菜の皮をむくなどの下拵えの手伝い
それが終わったら軽く朝昼兼用の何かを口に入れて、そのまま甲板へ。
天気がいい、夏島の近くなどであれば午前中干しただけで乾いてくれる洗濯物。
乾いているものを取り入れて、畳んで各部屋へと運ぶ。
掃除に関しては船員が担当しているので私は自分の部屋を掃除するだけで終わる。
後の自由時間では不自由な言葉の壁を少なくするために勉強に励んだり、だ。
つまるところ私が担当するのは簡単な料理の下拵えと片づけ、船員全体の洗濯物、後は医務室の簡単な手伝い。それくらいだ。
今でこそ時間をうまく使い自分の時間を作ることができるようになったが、乗った当初はひどかった。
自分の時間どころかなかなかご飯を食べるタイミングすらつかめず、一度まともに倒れたのだ。
全力で船医さんに怒られ赤髪に笑われベンベックマンさんに呆れられた。
あんなに恥ずかしい思いをしたのはこの世界に来て初めてかもしれないくらいに。
何よりもこの船に乗って変化したのは私のあり方だろう。
存在感がないのは相変わらずだけれどもそれを利用して戦いに参加するようになった。
というよりもどこかの船が近づいてこれば問答無用で甲板に引っ張り出されるのだ。
戦い方は教えてやる、その言葉は嘘ではなかったけれど赤髪の教え方は実践重視で。
死なないためにはベンベックマンさんが気まぐれで行ってくれる簡易訓練に死にものぐるいで着いていくしかなかったのだ。
彼には大変お世話になっている。
というのもなれない言葉を根気強く教えてくれたし、書取、聞き取りなど生きていく上で必要とされることは一通り彼によってたたき込まれた。
おかげさまで言葉には唐突すぎたり、難しすぎたりしない限りは理解ができるようになって。
でも、未だに聞けずにいるんだ。
「いつになればこの船は白髭のところにいくの?」
とは。
それを言った瞬間、何かが壊れると、どこかで理解していたのかもしれない。
この場所で過ごすようになって、そうして理解したこと、わかったことはたくさんあったけれど、自分にとって一番理解したくなかったことは真実だった。
あの獰猛な瞳は決して私を助けるためだけにこの船に乗せたのではないと、理解していた。
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