ドリーム小説













蒼の世界で生きる 欲望









という少女は非常に聡い子であった。


俺をシャンクスと、名で呼んだのは本当にはじめだけ。

それからはまるで距離をとるかのように赤髪と、そう呼ぶようになった。


別に呼び方に怒るほど名に思い入れはないし、をこの船に乗せても仲間として受け入れたわけではなかったから丁度よかったのだが。

はじめの戦闘以来、どっかのばかが攻めてきたときには遠慮なくを戦場へ放り込むことにした。

死ねばそこまで。

ただの暇つぶしのようなそれに彼女は必死に生にすがりついた。

その様は滑稽で、非常に俺を楽しませてくれる。

さりげなく手をかすベンたちは俺なんかよりよっぽど人間ができているんだろう。


確かにはおもしろい。

この船に乗せていてもかまわないと思うくらいには。

見た目はただのちんちくりんで俺が抱きたいと思うような体つきをしてはいない。

しかしながそれは一時だけ塗りかえられる。


戦場にたち、赤く血に塗れたとき。



そのとき彼女はひどく艶やかに美しい存在になる。

その瞳はすべてをあきらめて絶望しながらも生にすがりつく。

その体は明らかにふるえながらも決して刀を手放そうとはせず。

赤く塗れたその体はどんな化粧を施し着飾った女たちよりも美しく。


俺が手を出したいと、そう思うような女に。



手を出すことに抵抗はなかったが、俺の欲に気がついてであろう、ベンたちがさりげなく戦闘後の彼女と俺を近づけさせはせず。



まあそれをかいくぐってまで手を出そうとそう思うほど若くはないわけで。



だからそうやって遠ざけてやっていたというのに。






「赤髪、さん・・・?」



自分の下、驚きで瞳を真ん丸にして。

艶やかな黒髪が白いシーツに広がるさまは非常に扇情的で。

何が起こったのか、理解しきれていないその表情に思わず笑みが漏れる。

片腕だけの拘束は普通であれば簡単にとけるであろう。


それはもちろん俺以外の人物であれば、ということで。



据え膳を食わぬほど俺は紳士ではないし、戦闘で高ぶった欲をぶちまける相手がいるのにほおっておくほどおとなしくもない。





たとえ相手が甲板に忘れた俺の荷物を届けに来てくれただけだとしても。





ゆるり、その髪を、眦を、頬を、赤く色づく唇を、たった一つの手で、触れるか触れないかの距離で走らせる。


びくりと小さく体をふるえるそれにじわり、湧き上がる熱を隠すつもりはなく。

ぐっ、と両足ではさみ抑え込んだその体に近づく。





至近距離で見るその顔は確かに平均的で10人に聞いて5人かわいいと答えればいいほうだろう。

しかしながらいまだに戦闘の興奮冷めやらぬその瞳は強く淀んだ光を宿していて。



欲しいと、素直に感じた。


自分の乾いた唇を舌で濡らしてさらに距離を詰める。

指一本分の距離をとの唇の間に残してその瞳をまっすぐと見ればなんとも悪そうな顔をした自分が目に入って。







囁くように告げれば、普通の女ならば受け入れるように瞳を閉じるだろう。


しかしそんなことはもちろんおこらないわけで。

至近距離、動けば触れると理解しているのだろう、は瞳をさまよわせることしかできぬようで。


「赤髪、っさん、」


咎めるようにあげられた声。


シャンクス、そう名前で呼ばれないことに初めて不満を持った。




「名前呼べよ、」



顔をずらし耳に舌を這わせる。

小さく漏れた声が、俺を、さらにあおる。



そのままゆるりと舌を這わせて、唇のすぐ横で止まる。


「なあ、名前呼べ。」


再度請うがぐっと引き締められた口元は開くことはなく。



まあいいか、どうせやることは変わらない。



一つ溜息を吐いてそのままその赤い唇にかじりつく


否、つこうとしたんだ。









  まるこたいちょう、







その口が小さくかたどったのは半年間決して彼女の中から消えることのなかった人物で。









久しぶりに、苛立った。









「、っいっ!」







喘ぎ声ではなく、口から洩らされたのは痛みの悲鳴。




口の中に広がった鉄の味に、自分が彼女の首を思い切り噛んだことに気が付く。



ちらりと目をやったの顔は痛みで強張り、ぐっと閉じられた瞳から透明のしずくがあふれて












ぞくりと、する。













それでもその口が発するのは隊長、という俺ではない相手で。







一度離した口をもう一度先ほどかみついた場所へとつけてべろりとなめあげる。

そうすれば先ほどとは違う痛みだろう、さらに声が上がって。








こんなにも長い間あの船に返すこともなく、あいつらが捜しに来ることすらなかったというのに


彼女の中に深く深く、それは存在していて。







「お頭、それくらいにしとけ」



いつの間にかやってきていたベンの言葉を合図に最後にもう一度そこをなめて距離をとる。



「ベン、白髭に連絡をとれ。今から会いに行くってな。」







たとえどんなにほったらかされていても、彼女が死ぬ時にはあいつらが浮かぶのだろう。






自分の歯型によって鬱血したその場所をちらりと目にして上がった熱を冷ますために甲板に向かった。































※※
ごめんなさい、楽しかったです。














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