ドリーム小説
蒼の世界で生きる 賭事
「日が暮れる前にここに戻ってこい。」
海軍にばれぬよう、少人数で奪ったどこかの海賊船でその島に向かった。
事前に会いに行くと、そう連絡を取ればその島にて待つ、そう返答があったのだ。
約束の時間は夜。
それまでの時間に先に食料などの買い出しを行うようで。
お前にやることはない、言外に告げられたそれに頷いて、にぎやかな町へと足を向けた。
あんなことが起こってから赤髪に恐怖しか感じなくなった。
そっと距離をとって、常に副船長のそばにあるようにして。
赤髪の船に乗るのは今日で最後、そう願いたい。
活気にあふれたその町は、イゾウ隊長が初めて自分を見つけてくれた場所ににていて。
同じようにもう一度見つけてくれないだろうか、そんな期待がよぎった。
かばんのなかに入れっぱなしになっている贈り物はずっとしまっていた所為かぼろぼろで。
大事に大事に、これを渡すために、そんな名目で持ち歩いてはいたけれど実際に渡せる自信はなくて。
蒼色の腰紐
紅色の帽子飾り
紫色の
黄色のスカーフ
どれもどれも、あのときとてもいいものに思えたそれは、今では色あせていて。
「梨湖!」
聞こえてきた名前に、声に、どくりと胸がなった。
ゆっくりとそちらへと視線を向ければ、そこには半年前よりもずっとずっときれいになった女の子。
お嬢様みたいにスカートをはいていたそれは、動きやすい活発なものに。
長い長いふわふわ揺れていたきれいな髪は頭のてっぺんできれいに結われて。
組み紐によって結われたそれは同じくつけられた細工の細かい簪によってしゃらりと音を立てる。
ふわり、浮かべられる笑みは、慈愛にあふれて、愛しさが込められて、みるものの目を、奪う
まるで私と正反対。
彼女を呼んだ隊員はみたことのない人物だったけれど、それでも体に刻まれたマークが白髭を象徴する。
きれいに笑う彼女の手を引いて、歩きだした隊員。
それにつられるようにわらわらと集まってくるほかの隊員たち。
その中には見知った姿もあって、
まるで自分の時間だけが止まってしまっているかのよう
「梨湖、」
耳をふるわすその声。
それは確かにずっとずっと聞きたかった声。
あの場所で私を守ってくれていた人の声。
ゆるり、そちらをみれば蒼い瞳と金色の髪。
眠たげな瞳はそれでも彼女をまっすぐに見据えていて。
「今日の夜は来客がある。準備もしねえといけねえからさっさと帰って来いよい。」
こちらを向いてはくれない、みてはくれない、それがどうしようもなくもどかしくて、体が勝手に動き出した。
否、しようとした。
「なあ、賭をしようじゃねえか、。」
口をふさがれて、その腕によって体が前へと進むことさえ遮られて。
そうやってかすかに視線にはいる赤色に、聞こえた声に、大きく体がふるえた。
「お前の存在に誰か一人でも気がつけばちゃんとあの船に返してやる。だがな、」
耳元で響く低い声、くつりと笑い声に体は動けないまま
「誰一人としてお前に気がつかなかったときは、一生俺の船に乗れ。」
誰も自分を覚えていないのならば、それでもいいかもしれないぼんやりと考えた私はきっと、恐怖で頭が回っていないのだろう
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