ドリーム小説













蒼の世界で生きる 喪失  (badend.ver 不死鳥)







記憶の片隅に追いやられて、思い出すことなんて少なくなった。

未だにその存在は自分の中に根付いてはいたが、優先することもたくさんあって。


だからこそ、信じきれなかった。



突然現れたそれ。


よぎったのは彼女。


それはつまり、突然現れたわけではないと。

突然現れたのではなく、元々そこにいたのだ


彼女を認識できなかったことに驚き、思わず固まった。


そしてなによりも、彼女が刃を手にしていることに、赤髪を守ったことに、思考回路が混乱する。


深くかぶったフード。

その端から見える黒い髪は確かに彼女のもの。

それでも、信じきれない自分がいて。




ちらりと、のぞいた、瞳が、悲しげに、ゆれて


「あなたの勝ちです。」



発された言葉は少々かすれてはいたけれど、確かに彼女の、のもので。


ぞくりと、した。


音もなく、短剣を翻して鞘に戻して。

その言葉は諦観しか含んでおらず。



「っ、!!」



名前を、よんだのに。

振り向くことなどせず。

それがすべてを振り切るようで。



思わず彼女へと踏みだそうとした足。

それは赤髪によって遮られて。


「あれは、俺のだ。」


その言葉にじわり沸き上がる苛立ち。

あれ、だと?

彼女はものではない。

は、俺たちの大事な家族だ。


探して探して、見つからなかったけれど、どうしようもなくかわいくて大事な、大事で仕方のない妹だ。



けれども、




置いていった、それは、事実で。





彼女が俺たちに背を向けて船を下りていったことも真実で。





一度も、俺たちの名前をよばなかったことに泣きたいくらい苦しくなった。





































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