ドリーム小説













蒼の世界で生きる 希望









、」








雑然とした甲板に響く、呆然とした声。

それは確かに自分の名前を紡いで。



確かに私の名前で。



ゆっくりと深くかぶっていたフードを持ち上げる。

そおっと向けた視線の常にはない驚きを露わにした蒼い色。



、」



再び呼ばれる名前。

今度は特徴的なリーゼントが私へと一歩足を進めて。




私を覚えていてくれた





ただその事実がどうしようもないくらいにうれしくて。


泣きたくてしかたがなくなった。



「言いたいことはいろいろあるが___」



ゆるり、キセルをたゆらせて、イゾウ隊長が手を伸ばす。



「おいで、。」







広げられた、腕。


それは確かに私を待っていて。




「たい、ちょう、」





一歩、踏み出した、その瞬間、


後ろから伸ばされた手が、私の体を縛り付ける






「賭は俺の勝ちだろう?」





耳元で響く低い低い声。

腰を通って首に回された手が、直りきっていない喉元の傷に触れる。

噛みつかれたその場所は未だに痛みを訴えていて。


「赤髪!!」


赤髪の名前を叫んだのは誰だったのか。

硬直した頭ではそれすら突き止められず。

浮かぶのはあの日のこと。


深く深く噛み千切るかのようにたてられた歯。


ぞくりと震えた背中。



_賭_



それは誰にも気が付かれなければ赤髪の船に乗り続けろというもの。




「っ、隊長が、気づいてくれました。」



誰も認識すらしてくれなかったのに、たった一人だけ自分を認識してくれた。


名前を呼んでくれた。


だから、賭は___



「あれはお前が動いたからだろう?お前が動かなければこのまま誰にも気が付かれなかった。」



ゆるり、首にかけられた手が、傷をえぐるように、



「賭はお前の反則負けだ。」




爪を立てた





「っい!」



いたい、そう口にしたはずなのに、音となって外に出てはくれず。



目の前が痛みのあまりあふれる涙でぼやける。



ざわめく周り。



けれどもそんなところに意識を向ける余裕なんかなくて。




「赤髪ぃっ!!!」



怒りを込めた声。

まっすぐに向けられるその感情

ぶわり、目の端で蒼がはじける



滲む視界で、未だに楽しそうな赤髪の笑い声を聞きながら、手を伸ばす。



助けて、その言葉もやっぱり音にはならず。




それと同時に目の前がクロで塗りつぶされて。



「動くな不死鳥。」


響く声は副船長のもの。






緊迫した雰囲気を感じながらもただ、痛みをこらえるだけで精一杯で







「!シャンクス!!」






そんな空気を破ったのは無邪気な声だった。














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