ドリーム小説
蒼の世界で生きる 形成
太陽はその日の役割を終え、かわりとばかりに上がる月。
綺麗なその光はくらい海面を輝かせて。
そのさまはいつもよりもさらににぎやかなその場所を温かく見守るかのようで。
白髭と隊長各とともに酒を酌み交わす。
後ろにいるベックは疲れたような表情をしながらも無言で酒を口にしていて。
「赤髪、俺の娘をここまで連れてきてくれたこと、礼を述べよう。」
ぐららら、と特徴的な笑い声は目の前の男のもの。
世界を、揺らすその音は今はただ娘を心配する父のもので。
「白髭さんよ、大事な家族を忘れていくとか、何やってんだ?」
「お前が連れて行かなければすぐに再開できたはずなんだがな。」
俺の言葉にその目は笑うことのないまま答える。
「そうか、それは悪いことをしたな!」
「老い先短い俺にとって、大事な娘との時間を半年間も無駄にしやがって。」
その半年間、を放っておいたのはお前たちだ。
怒りではない。
ただ、あきれにも似た感情が湧く。
「が自分で戻ることを望まなかった、そうは思わないのか?」
出会ったその時、は確かにおいて行かれたと、呆然としていて。
帰ることを望むことすらはばかられるようで。
ざわり、俺の言葉に沸き立った殺気に笑いが込み上げる。
「この半年間、どれくらいのやつがを覚えていた?」
存在感を持たないを俺の船のやつらもよく忘れた。
存在感を持たないということはある意味存在をしていないということで。
いないも同然であったが存在しえない場所で、どれだけのやつが彼女を覚えていられたのか。
かすかに目をそらした奴らをちらりと見て、また言葉を紡ぐ。
「俺の船の中で、俺の腕の中で、何度お前らの名前を呼んだろうな。」
俺の船の腕、俺を見ずにこいつ等を呼んで。
あの組み敷いた日、助けなど来ないとわかっていただろうにそれでも不死鳥の名を呼んだ。
「に、何をした。」
ぞわり、肌をなぜる覇気。
それは心地よく、俺の神経を高ぶらせる。
怒り、あふれさせた感情はただただ俺の喜びにつながる。
「今のを、お前らは何も知らねえ。」
という存在はこの場所で確かに形成されて、だが、今、ここに戻った彼女はいったいなにで作られていると思っているんだ。
文字の読み書きを、聞き取りを、話すことを、徹底的に叩き込んだのはベンで。
死なぬように、否、死ぬことになろうとも俺を守るように思考回路に叩き込んだのは俺で。
なあ、この場所に帰ってきたは、いったい誰が作り上げたものだと思っている?
「今のあいつを作ったのは、俺だ」
まっすぐに俺に向けられる怒りの感情。
同時に向けられた刃に銃口。
ため息をつきながらも俺をかばうベック。
そして___
「・・・」
またやってしまったと、苦虫をかみつぶしたかのように視線をそらす。
その手に握られた短剣は、確かに俺を守るために振るわれていて。
「いい子だ、。」
名を呼んで、目の前の彼女に告げればびくり、恐れるように体を震わせる。
ベックが視線で咎めてくるがそんなもの、気にはするつもりはない
伸ばした手で、体を引き寄せて。
撫でるように傷口を触れば硬直するその体。
彼女の肩口から見える向こうのやつらの目が、非常に愉快で。
「」
しかしながらそれも続かず。
目の前のの硬直を解いたのは、白髭だった。
呼ばれたことにあわてて体を動かして俺の腕の中から逃げ出す。
違いすぎる体格故見上げる形になったを白髭はそれはそれはやさしい瞳で見下ろしていて。
大きな手が、に触れる。
撫でるさまは、まさしく父というものだろう。
「おかえり」
やさしい声に、震える体、
うつむくひとみに浮かぶ涙。
「・・・船長さん。」
それでも、呼び名は父ではない、そのことがひどく滑稽で。
「頭、あまり若いのをあおるなよ。」
ベックの言葉にうなずきながらも笑いが込み上げるのは耐えられなかった。
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