ドリーム小説
蒼の世界で生きる 帰艦
「さて、そろそろ帰るか。」
黒いマントをはためかせて楽しそうに赤髪は笑う。
後ろにひきつれた副船長はようやっとか、というようにため息を吐いていて。
ぐらららと笑う声が甲板に開く。
「さっさと帰りやがれ!」
「。」
呼ばれた声に本当は近づきたくなどなかったが、それでもお世話になったのは確かなのでそっと近寄って顔を見上げる。
そうすればぐ、っと距離を詰められて顔を覗き込まれた。
「いつでも俺の船に戻ってこい。」
それはそれは楽しそうに笑う。
面白いおもちゃを手放すような、あいも変わらずそんな感覚なのだろう。
「・・・お世話になりました。」
答えをはぐらかして例の言葉を述べればくつり、目の前の男はまた笑う。
「次はちゃと抱いてやるよ。」
「っ?!」
耳元で再びささやかれたかと思えば一つしかない腕で引き寄せられて、そのまま傷口に唇を寄せられて。
驚きで声を上げれば楽しそうな声とともに首にちりりとした痛みが走る。
「赤髪!」
後ろから伸ばされた腕によって目の前の赤は遠ざかり、目の前に怒りをあらわにした蒼色が紫がひろがった。
「は俺らの大事な妹だ。もう二度と離すつもりはねえ。」
「さっさと帰っちまえよい。」
あっけにとられて首元を抑える私にちらりと再び視線を向けて赤髪たちは船を下りて行った。
「、医務室いこうか。」
目の前ににょ、と現れたリーゼント。
サッチ隊長が眉をひそめながら首元を見るとそう言葉を紡いだ。
首元がどうなっているのかはわからないが隊長がそういうということは傷でもできているのだろう。
一つうなずけばふわり、隊長が笑って背中を押してくれる。
「ちゃん!あとでお話ししようね!」
船内へ戻ろうとすれば彼女の声が響いて、振り返れば満面の笑みを浮かべる彼女がいて。
「たくさん、話すればいい。お前も梨湖と同じ世界から来たっていまさら聞いたところで驚く必要なんかねえからな。」
やさしく頭を撫でられて、そういえば昨日そんなことを言ってしまっていたなと思い出す。
小さく手を彼女に振りかえして、船内に一歩足を入れた。
「ああ、ちゃんと言ってなかった。」
サッチ隊長の声に顔を上げればやさしく笑む瞳と目があって。
「おかえり、ちゃん。」
「ただいま、サッチ隊長」
簡単に出てきたその言葉に、泣きたいくらいに安心した。
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