ドリーム小説
蒼の世界で生きる 失敗
息を吸って、一つ、吐いて。
扉をたたく。
特徴的な笑い声と共に返った言葉は入室を許可するもの。
中に入ればナースのお姉さんたちと船長さんの姿。
どうした、そう穏やかな声で問われれば今までの緊張が柔らかくほぐされて。
「・・・たくさん心配かけてしまって、ごめんなさい。」
言いたいことはたくさんあったけれど、一番に伝えたいのはその言葉。
手招きをされて近づけば大きな手が私をなでる。
「心配かけるのは子供の特権だろうが。」
優しい言葉、それはじわりと胸にしみていく。
「何を持ってんだ?」
手に持っているその酒瓶はなんだ、と問われれば隠すこともできなくて。
そおっと前に出して船長さんに渡す。
「ずっと、渡したかったんですけれど・・・半年たっちゃいました。」
半年間、それは短いようでとても長い。
みなかった間に彼につけられた医薬品は増えていて。
「ありがとうな。」
さっきよりもずっと強く頭を揺らされて。
大きな笑い声がその場所に響いて。
「、おまえは俺にとって大事な娘だ。」
名前は存在を証明してくれる。
「たとえまたいなくなったところで、また見つけだしてやるから心配するな。」
必要だと述べてくれる。
それはとてもうれしいことで。
「ありがとう、・・・お父さん。」
小さく、本当に小さくつぶやいた言葉は届いただろうか。
少しだけ驚いて、そうして笑って見せたこの人に
「ねえ、あなた。」
受け取ってもらえたことにほっとしながら部屋を出て、隊長たちのもとへ向かおうとすれば、呼び止められて。
向いた先にはとてもきれいなナースのお姉さんがいて。
とてもきれいな顔とスタイルを持つのに、どうしてか今は不機嫌そうに表情をゆがめていて。
「ええ、と」
見たことのなかったその人。
名前も知らないので呼ぶことができずに言いよどめば、目の前のその人はぎゅっと眉をひそめて。
「クイラ、よ。あなたがいなかったときに乗ったの。」
「クイラさん、ですね。私はです。」
まっすぐと私を見つめて彼女は口を開いた。
「親父様の体のことを考えればお酒を送るなんてこと、思わないはずよ。」
鋭くにらみつけられた視線に、体は固まって、先ほどまでの高揚した気分は一気に失われて。
少しでも喜んでもらえれば、そんな理由で選んだそれは、彼の命を脅かすものにもつな上がるということに
考えなど至らなくて。
さあ、と血の気が引く。
睨みつけられた視線に返せる言葉などなくて。
「ともかく、これからはこんなことなさらないでください。」
あの人の体のことを一番理解しているのはナースの言葉は深く深く、突き刺さる。
ヒールを鳴らしてその場所を去っていく彼女をただ見ることしかできなくて。
手に持っていた荷物をぎゅう、と握りしめてうつむく。
何も間違ったことなど彼女は言っていない
それを考えなかった自分がすべて悪いのだ。
贈り物なんて、するべきじゃなかったのに。
抱きしめた鞄のなか聞こえた包装紙の音を聞こえないふりをしてさらに鞄を抱きしめた。
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