ドリーム小説
蒼の世界で生きる 変異
半年以上も会わなかった彼女は、俺たちが知っている彼女ではなくなっていた。
言葉は以前よりもずっと達者になった。
体つきは引き締まったものに。
気配はさらに感じられないものに。
表情は硬いまま。
それが顕著に現れていたのは彼女にたってほしくはなかった戦場で。
非戦闘員を集めて親父の部屋に押し込んで、その中に確かに彼女もいたはずだった。
だというのに、
「!?」
白髭の船をおそってきたルーキー。
その相手の船の上に、いつの間にか短剣を構えてたたずんでいた姿。
その船の船長の背後にたち、ふりあげられた刃は寸分違わず相手の心臓を突き刺す。
呆気にとられる俺たちから視線を逸らして、はほかの敵に目をやった。
なにが起こったのか、その船に乗っていた彼らにも理解ができないのだろう。
皆が皆呆然としていて。
そのまま、なにを躊躇する出もなく、ただ淡々と彼女は刃をふるう。
決して上手ではないそれらは、それでも的確に相手の急所をつく。
無表情、とまではいかないその表情が全身に赤をまとってゆがむ。
今にも泣き出しそうで、それでいて決して目を逸らさない。
赤く赤くまみれる姿は、今までみていたどんな彼女よりも存在感を醸し出していて。
今までそらしていた瞳をこちらに向けて、ふわり、泣きそうに笑う姿を
息をのむほど美しいと、そう思わずにはいられなかった。
けれども同時に、そんな場所に立ってほしくなどなかったと、なぜそこにいるのだと、怒りがあふれたのも確かで。
「ただいま」
その言葉とともに帰ってきた彼女。
同時に広がる張りつめた音。
戦闘後の高揚感にあふれていたその場所は一瞬で冷え渡り、目の前で、頬をはらしたはただ何の色を移すこともなくこちらを見ていて。
「さっさと手当、してこい」
その瞳を見ていることなどできなくて、ただその言葉を告げてから距離をとった。
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