ドリーム小説













蒼の世界で生きる 宴会


























彼女が家族になった。

何か少しでもめでたいこと、幸せなことがあると宴会やら宴やらと称して酒を飲み明かす。


それは海賊であるからこその行為でもあって。


私の時はなかったなあ、とか思わないから。

思ってなんか、ない。


「サッチ隊長、手伝う。」


料理全般を担当する四番隊。

そこのまとめ役であるサッチ隊長に手伝いを申し出る。

甲板はすでに樽があいて、皆が皆彼女の乗船に、新しい家族に祝杯を掲げていて。

参加したいのはやまやまなのだがかわいい彼女にナースのお姉さんたちのテンションは高く、

いつも相手してくれる16番隊は本日見張りの番で。


邪魔にならないように、少しでも役に立てるように、そう思って訪れた台所はなんというか、戦場でした。


!これとこれとこれ、それからこっちも持って行ってくれ!」


忙しさからか、いつもの穏やかな声ではなく、少々とげの入ったそれにちょっと驚きながら渡されたそれを運ぶ。

何度か往復することによって、運び終えたそれ。

何度目かに台所に顔を出せばそこには疲れた顔をした四番隊。

ばちりと目が合ったサッチ隊長がへらりと笑いながら手を振ってくれて。

「お疲れ、。助かったわ。」


よっていけば頭をくしゃりと撫でられる。

うん、気持ちいい。


「ほら、そろそろ甲板行ってなんか食べてきな。」

押された背中。

隊長はいかないのかと振り返ればもう少しやることがあるとのこと。

仕方なく向かった甲板。




開いた扉の向こう、満点の星空と、甲板に広がる酒樽。

そして、ふにゃふにゃと赤い顔をしながらそばにいる隊員に抱き着きに行く女の子。

ころころと笑う声は耳にやさしく響く。

・・・かわいい。


思ったのは本当のこと。

けどあれはもう完璧な酔っ払いだ。


彼女を取り囲む一団を通り過ぎて向かったのは船尾。


静かなそこは、それでも人がいないわけではなくて。


数人で固まって飲んでいたり、たばこを吸っていたり。



そこの隅っこのほうに腰を落ち着かせてサッチ隊長からもらった料理を口に運ぶ。





空から落ちてきた彼女は確かにきれいでかわいくて。

なんの苦も無く言葉を操っていて。

とても目立っていて。

やさしい。


彼女が身にまとっていた服は懐かしくて、

彼女が簡単に口に出したその世界。


自分の記憶の中だけかもしれなかったその世界。


彼女が言葉を発したことでそれが現実であると認識できて。




話したことはない。



私はこの世界の人ではないと。



それを伝える手段は持っていなかった。

それを信じてもらえると思うほど打ち解けられていなかった。

何よりも私自身が彼らを、信じられなかった。





綺麗な星空の下、思うのは愚かな自分。

過ぎたことを後悔しても遅いけれど、それでももう少しだけ素直になれていれば。



口に入れた料理はおいしくて、遠くから聞こえる喧騒がうらやましくて。



そっとひとつ、ため息をついた。





















戻る