ドリーム小説







蒼の世界で生きる 愛し子












気付いた瞬間、体は正直だった。


彼女の気配を探るべく、極限にまで意識を高めて。


早く早く、人の体よりもずっと速く動くことのできる蒼い鳥へと姿を変えて。





二日ぶりの彼女は、今まで見たどの時よりも小さく見えて。

触れた体は常になく、熱い。

青白い顔をしていながら頬は熱を抱き、呼吸は荒く。

べっとりと張り付いた髪が彼女の体調をさらに悪化させて。

苦しげに上下する胸が、状況の悪さを示す。



自分が不死鳥のままなのを忘れるくらい焦って。

思わずそのまま手を、羽を伸ばしてしまって。



触れる寸前、小さく開かれた瞳。


瞬く黒い瞳が確かに、蒼を映して。



「き、れい、」


呟かれた言葉は想像もしなかったもの。


ふわり、力なく笑えども、その手は確かに俺をつかんで。


「お願い、一人にしないで。」


「お願い、おいてかないで。」



あらい呼吸とともに呟かれたそれ。



だれが置いていくことなどできるだろうか。



こんなにも小さくて弱い、存在を。


こんなにも自分を求めてくれていた存在を。





「お前が願ったってもう、おいていったりしねえよい。」



人に戻って、つかまれた腕をそのままにその体を抱きしめる。



そのぬくもりは確かにここにある証明で。




「だれがをここに連れてきたかは知れねえが、もう返してやる気なんざねえからな。」






の世界がこいつを追い出したんであれば、この世界が、俺が、こいつを受け入れてやろうじゃないか。










「マルコ!!」

地下からを連れて地上に上がればちょうどサッチもこちらに向かってきていたようで。

俺の腕の中にいたを見てぎょっとする。


「医務室先に行ってるぞ!!」

慌ててきた道を戻って医務室に向かうサッチを何事かと周りの船員が目を向けてくる。

それはもちろんその後ろを行く俺にも向けられていて。


「あれ?!?え、隊長どうしたんっすか!?」

「具合わりいんですかい?!」

「ちょ、!?」

行きかう奴らからもたらされる声は、確かにこの腕の中のへのもの。


ほら、聞こえてるかい、


こいつらはちゃんとお前を認識していて、お前の名前を知っていて、お前を必要だと思っている。




お前は一人じゃねえよい。




「・・・でもなんか、赤い顔で呼吸乱してるって___」


おい、誰だ今の言ったやつ。

しばいてやるからでてこい。

赤い顔をぐっと自分の胸元に押し付けて奴らから顔を隠す。



・・・だけどまあ俺だけに頼っててほしかったとか、思うのは自由だろい。




「マルコ!さっさとしろよ!」


一足先に医務室に向かっていたサッチがしびれを切らしたように声を上げる。


騒がしい奴だよい。


それを聞き流しサッチを押しのけて、医務室の中に入る。


待機していた船医にを集めて。

どこか動揺しているナースたちに視線をやる。


「どうしよ、いじめすぎちゃった・・・」


小さくつぶやかれたそれ。

何事かと目をやればうろうろと視線がさまようナースたち。

「お前ら今何言った?」

サッチの低い声に彼女たちは小さく肩を震わせた。


「だって・・・」

「だって、震えるちゃん。すっごくかわいいんだもの!」

出てきた言葉は思いもがけないものだった。


「プルプル震えてね、泣きそうなのよね。」

「でもなくものですか!ってね!落ち込んでしゅんとしてるのとか、もうっ!!」


「ええと、ナースさんたち?」

サッチが困ったように声をかければきっ、と鋭くなる瞳。


「だってだって!船長や隊長たちばっかりお土産もらったり、仲いいとか、許せないわ!」

とてもきれいな表情でそんなことを言われればどうすればいいのだろうか。


「・・・お土産ってなんだよい。」


引っかかったのはそこ。

がおやじに酒を買ったのは知っていたがそれ以外は知らない。

受け取ってなどいないのだから。


「あ、やっぱりもらっていませんよね。」

嬉しそうに笑ったのはがいなかった間にこの船に乗ってきたナースで。

「そうそう。クイラがちょこっと言葉をかけたらしょんぼり肩を落としていたものね。」


それはそれは恍惚とした表情で彼女たちは言葉を紡ぐ。


てえ、と、なんだ。


つまり、何となく最近が元気がなかった原因はナースたちで。

そんでもって彼女たちは落ち込むが見たかったがために(その理由はかわいいからとか・・・)を若干いじめていた、と・・・。


「でも、マルコ隊長。」

ため息をついていれば、す、っと姿勢を正したナースたち。


「彼女をここまで突き放したのは隊長だということ、お忘れなく。」


ぎくりと、した。


彼女の頬を叩いて、彼女が部屋に来たのを追い出した。



それは事実で、それが今につながっていて。



「わかってる、よい。」




起きたと一番にきちんと話さなければいけない、そう感じた。





















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