ドリーム小説













蒼の世界で生きる 気付




マルコ視点


















「すまねえ!マルコ、梨湖を見失った!」


夕方。

穏やかな夕日に照らされたモビーデックに広がった声。

それはエースのもので。


エースが着いてるから大丈夫だろう。そのように思っていた今朝の俺にため息をついた。


「エース。二番隊で捜索に当たれ。まだあいつはこの場所に来て日が浅い。いいことも悪いこともわかんねえにちがいねえ。できるだけ早く見つけろよい」

梨湖がこの世界に疎いから、それも確かに理由ではあるが、今はもう一つ気にしなければいけないことがあって。



四皇の一人である赤髪


それが今現在自分たちが滞在している島に向かって来ているという情報がはいってきた。

ただでさえ海軍によって見張られている四皇。

その接触は危惧さえている。

俺たちとしても不用意な接触は命取りになる。

赤髪もそれを理解しているはずなのだが。


まあ用事があるというならば、向こうから何らかことを起こすであろう。


とりあえず相手の出方がわからないうちは距離をとるのが一番だ。


「ログはすでにたまってる。積み入れも終了してる。梨湖が戻ってきたらすぐに出航できるように用意しとけよい。」

告げたそれに甲板に慌ただしさが広がる。

とりあえず自分もあの子を探すために青色を身にまとった。



結局梨湖は無事にエースたち二番隊に保護されて、船に戻ってきた。

隊員たちも皆乗り込んでいるのを確認してあわただしいながらも船を出す。


そう、船を出したんだ。



自分が忘れてしまっている存在があることすら忘れて。






つれられて戻ってきた梨湖。

出航の邪魔になるからと部屋にいるように促して。

そうして船が海流にのり落ち着いたため梨湖に何があったのか、話を聞こうと彼女の部屋に行って。

そうしてはじめて気がついた。

彼女が手にもつ酒瓶に。

それはあまりみたことのない銘柄で。

彼女が持っているという違和感を感じながらそれは何かと問うた。


「ええ、と、なんて言う子だったかな?あの子が助けてくれたの!この船の女の子。私お礼言わなきゃ!」


じわり、いやな予感が頭をかすめた。

そういえば、あいつはどうしてるのだろうか。

16番隊はこの島にいる間丁度非番で。

だからこそあいつが島を降りていることは十分あり得ることで。


出航作業は邪魔になるからとナースたちの部屋で彼女たちの作業を手伝うのが常。

しかしながら今日は彼女たちはおやじのそばに着いていた。

考えれば考えるほど浮かぶいやな予感。

それを振り払うようにあえてその名前を口にする。

否、しようとした。


「マルコ、おめえさん、をみなかったか?」


開いた扉の向こう、どこか焦ったような表情でイゾウはそういった。


ずくり

いやな予感が現実味を帯びる。


「い、や。部屋かナースたちのところじゃないのかよい。」


自分で答えながらも気がついていた。

どこにもいなかったからイゾウは俺に聞いているのだと。


「夕方には戻るっていって船を下りてんだ。その後姿を見なかったが船に戻ってるんだと思ってたんだが・・・」


イゾウの顔に浮かぶ焦り。

それが今起こっていることが現実だと示すようで。


「なあ、しらねえ?」


イゾウの後ろからひょこりと顔を出したサッチ。

気配にさといサッチはすぐにその部屋に充満する何かに気づく。


「・・・もしかして」



、さん、」

サッチの声を遮って聞こえた小さな声は梨湖のもの。

それにようやっとイゾウは梨湖に目をやる。

そして、瞳を大きく開いて驚きの表情を露わにした。


「梨湖、その酒どうした?」


ゆっくりと室内にはいってきたイゾウが酒瓶を梨湖から取り、わななく唇で問うた。


さんに、渡されて、」



助けてくれたのだと、かばってくれたのだと。

気がついたら船に乗っていたから、てっきりも一緒に帰ってきたと思っていたと、梨湖はそういった。


「帰ったら渡したいものがあるって、島であったときに言われてよ。それで探してたんだが・・・」


呆然とした表情をするサッチにイゾウ。


大事な家族を急いでいたからといって置き去りにしてしまった。
それも見つけることがひどく難しい少女を。

自分の失態に思わず舌を鳴らす。


「島までそんなに遠くねえ。ほかの奴に聞いてもしらねえってんならちょっと見に行ってくるよい。」

「親父に報告してくる。」

「梨湖、とりあえずご飯できてるから食堂においで。」






夕方には帰る。

その言葉を信じて疑わなかったイゾウ。


渡したいものがあると笑顔で言われた。

だというのにその笑みを浮かべた少女はここにはいない。



帰ってきていると勝手に思い、確認を怠った自分。






もしかしたらまだ船内にいる可能性もなくはない。


少ないであろう可能性にかけ、船内を巡った。




























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