ドリーム小説







蒼の世界で生きる  悪夢













夢を見た。





それはそれは、恐ろしくて、こわい夢を。


泣き叫んで逃げたくても何かの力によって縛られるかのように逃げられない夢を。





はじめにみたのはみんなの姿。

二つの墓標の前で傷ついた姿で呆然と立ち尽くすみんな。

みたくはないと思っても、見ないでいたいと願っても、あっけなくそれらはねじ伏せられて。




大きな墓標。

一つには見慣れた橙色のテンガロハットが。

そしてもう一つにはあの船の父親の上着が。





信じられずにいる私の目の前で世界は反転。

ついで目の前に広がったのはたくさんの屍と傷ついたあの船のみんな。

抗戦している相手は海軍で。

皆が傷ついて広がる叫びに、声。





ひときわ大きな叫び声があがって。


そちらには大将赤犬の前で誰かをかばうようにたつ、彼の姿。



彼の

胸に

あいた

おおきな

あなからは




赤く赤く



命の

いろが















「っうぁっ______!!??」





とびおきて、体中に書いた汗に、自分の声にならない叫び声に



ただただ体に広がる恐怖は振り払えるきもしなくて。









「・・・えーす」




赤く染まった彼の名を呼ぶことは、今の震えを止めることよりも難しかった。













二度目の夢はエースが家族であったはずの人物によってとらわれるところを


三度目の夢はエースが誰かを追いかけて船から飛び出すところを


四度目の夢は誰かの葬式が行われるところ




そして、五度目の夢は、すべての真実を語った。





ビデオの巻き戻しを見るようなそれら。

五度目の夢によってつながった事象は、一つの事柄を照らしていて。



六度目の夢は振り出しに戻った。



再びお墓の前に立つみんなの姿。

繰り返される惨劇は、深く深く、忘れることなど許さぬというかのように心臓に頭に刻み込まれて。











なぜこんな夢を見るのか。



大切な人たちがいなくなっていく様子を、どうして繰り返し見てしまうのか。



それでも、幾度目かの五度目の夢。







夢のさなか、私をかわいがってくれていたその人が赤く染まるその瞬間、壁に掛けられた暦が告げた真実。





それが告げるのは今よりも先の未来のこと。





夢を見た意味を、理解した気がした。





置手紙を一つだけ残して、そうして自分の体質そのままに島に泊まっていた船から降りて。


そうして、向かうはあの大きな船。


今どこにいるか、大体の場所は情報として知っていた。


だからこそ、その場所に向かって。





私を認識してくれない大事な人たち。


それでも、動かずにはいられなくて



この理解できない体質が、この時のためにあったのだとしたら初めて自分のこの体質を許せる気がして。











ただの夢であればいい。


そんな願いを持ちながらクジラの船を目指した。



























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