ドリーム小説







蒼の世界で生きる  戦場












たどり着いた戦場。


迎え撃つのは海軍の総戦力。


それはマリンフォードを埋め尽くすほど。





そして彼らの中、呆然とこちらを見てくるのは、ずっとずっと探していた






エース隊長で。






鎖でつながれた姿はそれでも、たくましく。

トレードマークの帽子は存在しないけれど、それでもまっすぐとこちらを見る瞳は曇りなく。


なんで見捨ててくれなかった、そう叫ぶ隊長を船長たちは簡単に笑い飛ばす。


言葉を失いうつむく姿は、それでもなお誇りを背負う。




大事な家族に手を出すなんて、決して許しはしないから。








さあ、隊長を、助けに行こう。










駆け抜ける戦場。


見えないながらも攻撃はもちろん当たるわけで、必死にそれらを潜り抜けて、ただ、走った。


氷によって凍った世界。


ジョズ隊長が受け止めた斬撃。


マルコ隊長が鮮やかに彩る空。


中将たちによって守られる湾を、気配をさらに消して駆け抜ける。


赤イヌによって赤く燃えたぎる世界を死に物狂いでよけきって。


オーズさんが作り出してくれた道をたどる。


海賊女帝の美しさに思わず目を奪われそうになったのは気のせいにして、


見た目だけはかわいい暴君くまの攻撃を後ろに爆風を受け、転がる。


走っているだけだというのに、体中満身創痍とはどういうことだ。




それでも、たった一人、見つめるのは彼だけで





広がる叫び声。


きつく香るのは潮のにおいと鉄のにおい







ぞくり




体に走った悪寒。

慌てて足を止めれば次の一歩を踏み出す場所だった場所に斬撃が落とされて。


ゆるり、顔を上げれば、そこにいたのは派手なピンク色を身にまとう七武海の一人。



サングラスによって隠された瞳。

それでも今のこの状況を愉しんでいる、それだけはわかって。



「こんなとこに、えらく不釣り合いな女がいるじゃねえか!」


それはそれは愉しそうに、笑い声をあげる目の前の男。


ここまで気づかれなかったというのに、突然ばれた、その理由は分からないけれど、



それでも、ここを切り抜けなければ終わりだと、それだけは理解していて。


片足を一歩後ろに下げて、すぐにでも動き出せるよう態勢を整える。



中指を立てて、くい、と動かせば私の後ろにいたアトモス隊長が仲間へと刃を振り下ろす。


あがる悲鳴。


叫ぶ声。


つまりそれは、意思とは関係なく動かされているということで。



「海賊が悪!?海軍が正義!?」


叫ぶ声は大きく響く。


一歩、また一歩。


私への距離を詰めるその男。


背中が凍りそうになるほどの、恐怖。



声が、意味が、頭の中に入ってはこない。




高い背を丸めながら見下ろすそれは激しい威圧感を伴って。



「勝者だけが、正義だ!!!」



にやりと大きくゆがんだ唇が叫ぶのは、






海賊への悪でも


海軍への正義でもなく





勝者によって、世界はいかようにでも塗り替えられるという




そんな事実。






勝てばいいのだと、ただそう告げるだけの、言葉。






伸ばされた、手が、私の、頬に触れる。




慎重に比例してでかいその掌は、いたぶるかのようにこめかみから顎までを包み込んで。


ぞっとするほどの視線をもたらしながら、その掌が持つぬくもりに、頭が混乱する。




「おもしろいじゃねえか。なあ、」





目の前にいるのは、敵か、味方か。




「お前、名前は?」




掌が、ゆるりと私の、首に、かかる___






その瞬間








「エ―――ス!!」









響いた声は、希望の光。
























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