ドリーム小説
蒼の世界で生きる 兄弟
スクアードさんの言葉は他の海賊団を揺るがすものとなって。
馬鹿な息子を、それでも愛そう。
けれどもそれは船長さんの言葉によってあっさりと打ち砕かれて。
惑わしたのは海軍。
正義の名を背負う偽善者たち。
仲間割れをそそのかすそのさまのどこが正義だというものか。
知っていた、
それは体感するとは全然違って。
あふれそうになる怒りを必死で抑える。
感情を高ぶらせれば、それで終わり。
私は簡単に気づかれてしまう。
息を、吐く。
大丈夫、大丈夫。
私にはやることがあるのだから。
動き出した船長さんの勢いは誰にも止められはしない。
閉じられそうになる湾。
麦わらたちよりも一足先に中に入り込めば、そこに広がるのは海軍の海。
けれども、気づかれては、いない。
同時に後ろで閉まった鉄の城壁。
オーズさんが開いた道だけが、この場所へと至る手段。
それでも、私がすることは
ゆっくりと、呆然と湾を見るエース隊長を見上げる。
同時に落とされる死刑執行の合図。
誰がそれを、認めてなどやるものか。
ここに来るまでに見つけた海楼石の手錠。
能力者ではない私にとって、この手錠は何のかせにもなりはしない。
だからこそ、私にできること。
城壁を飛び越えてきた麦わら。
その若さは、時に無謀で無鉄砲。
それでも、彼はここでは死なない。
突破してくる多くの海賊たち。
船長さんの、その横には確かにサッチ隊長の姿が。
「、」
小さく呼ばれた声、同時に浮遊感。
目の前に広がった蒼はマルコ隊長のもの。
ふわふわしたそれらに囲まれることによって、私の姿は周りからは見えず。
「エースを、頼んだよい。」
言葉と同時に向かう処刑台。
目の前に現れた英雄の姿に、隊長はとっさに私を放り投げて。
無様ながらもなんとか着地したその場所、
目の前には目を見開いたエース隊長。
私の名前を呼ぼうとした隊長にふわり、笑って指を立てる。
まだ、ばれていないから。
ここには彼が迎えに来てくれる。
だから少しでも安全に、帰れるように。
体中に感じた覇気をなんとか持ちこたえて、ゆっくりとそこから戦場を見渡す。
三大将と対する麦わら。
それらをも乗り越えて、そうして駆け上がってくるその小さな姿。
大事な肉親を殴り飛ばしながら、その顔には笑みを浮かべて。
「エース!」
ようやっと出会えた兄妹の再開を邪魔する、そんな無粋を許しはしない。
ゆらり、膨れだすセンゴクの体。
その後ろに回り込んで、その手に、手錠を
かちりと、はめた。
途端、目の前の大きな体は急速に縮み出し、
不思議な能力を発動していた麦わらの瞳に私が移る。
「え?お前どこから、」
「エース隊長を、はやく!!」
鍵を外して、向かう様々な敵から、彼を、守って。
崩れだした処刑台。
けれどもそのうえで、確かに紅色の炎は燃え上がった。
纏う紅
鮮やかな色
麦わら帽子と並んで立つその姿はなぜかとても似合って見えて。
蒼い蒼いその空を背に、輝く光がもたらした
大きな、希望
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